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「その…涼くん…私…」
「…って、こんなこと言われても困るよね、Aちゃん。」
「へ？」
「そっけなくしたのはごめん。これからは普通に接するから、Aちゃんも普通にしてて。」
「…分かった…」
「じゃあ、俺もう寝るから、おやすみ。Aちゃん。」
「おやすみ…」
追い出されてしまった。
それにしても、
涼くん、蒼弥、作間さん
ただの寮母でありながら、3人からの告白を受けてしまった。
蒼弥以外にははっきりと返事をしてないし、どうしよう…。
いや、でも言い訳させて欲しい。
涼くんと作間さんに関しては返事を求められなかったもん。
だから私は返事しなかった。それだけ。
蒼弥のことはちゃんと断ったし。
絶対惚れさせてやる、とか余計に燃えられたけど。
3人とも、もちろんかっこいいし、関わると良い人だということも分かる。
でもお仕事で関わっているから恋愛に発展するのはダメな気がする。
それに…。
まだまだ初恋を引きずっているのだ。
北海道旅行で出会って結婚の約束をした男の子への。
もちろんあんなの真に受けてない。
子供の口約束だ。
でもどこかで会えたらって期待している自分もいる。
私はポケットから財布を取り出し、その中から一枚のチェキを引き抜いた。
男の子との別れ間際にお兄ちゃんに撮ってもらったチェキだ。
あれ以来大事にずっと持っている。
撮った後暫くしてすぐ濡らしてしまって肝心の男の子の顔はぼやけてるんだけどね。
だからはっきりと顔は分からず、雰囲気だけになっている。
私はそれを暫く眺めてから財布に戻し、自分の部屋に戻った。
たまたま寝ようと廊下を歩いていた瑞稀が立ち止まって何かを見るAを見つける。
声をかけようとしたがすぐに行ってしまった。
それを残念に思いつつ、床を見ると、Aが何かを落として行っていた。
拾ってみると、古びたチェキ。
幼いAと帽子を被った男の子が写っている。
なんとなく見覚えのある帽子。
明日Aに返そう、そう思ったと同時に瑞稀はある事に気が付いた。
「こいつ…もしかして…」
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作成日時：2023年3月22日 22時
