誘拐 ページ19
「A、ようやく見つけた」
「お母さん…なんで…」
学校から出ると、母親が校門に立っていた。
「そんな怯えなくて良いじゃない。お茶しましょ。」
「…今更何よ。私はあなたから逃げる為に…！」
「あなた達、Aを車に乗せて。」
私はお母さんの後ろにいた男2人に強引に車に乗せられた。
車が向かった先はこの前涼くんと来た喫茶店。
「ほら、おいで。」
「嫌だ。今すぐ帰して。」
「相変わらず聞き分けの悪い子ね。Aを連れてきてちょうだい。」
そうして男達に引っ張られて入店。
「どう？高校は。」
「話す事なんて無い」
「やましい事があるから話せないんじゃなくて？」
そうしてお母さんが机の上に出したのは沢山の写真。
その写真には学校前で私と瑞稀くんが話す様子、作間さんとスーパーで買い物している様子、蒼弥や涼くん、優斗と一緒に帰る様子が写っていた。
なにこれ…。
「学校を特定してからAの生活を見せてもらったわ。勉強もせず男とばかり…。おおかたお兄ちゃんの家でお世話になっているんでしょう。あの子はあなたに甘いから。そんなんじゃこの先生きていけないわ。帰ってきなさい。」
ずっと見られていた事は怖いけど、寮母の仕事と家はバレていないみたいで良かった。母は思い込みが強いので兄の家にいると信じて疑わず家までは来なかったんだろう。
「帰る訳ないでしょ」
一度来た事があるところなのが幸いだった。
帰り道が分かる。
私は勢いよく立ち上がった。
「待ちなさい。」
しかし男達に無理やり抑えられる。
駄目だ、このままじゃ連れてかれる…
この仕事を始めたのは母から逃げる為だった。
社長令嬢だった母は私の実父に当たる人に金を奪い逃げされた。北海道旅行は家族仲がまだ良かった最後の思い出だった気がする。人間不信になった母は更にヒステリックも加わり、周りから人が消えていった。そのせいで私と兄に依存するようになったのだ。
母は勉強する事を強要し、私が友達を作る事を許さなかった。
友達がいる事がバレれば暴言を浴びせられ殴られた。
そんな生活が嫌で高校受験を機に、母にバレぬよう既に成人していた兄の家へ逃げたのだ。
しかしいつまでも兄に頼る訳には行かないと思い、寮母の仕事を始めた。
高校で初めて友達を作れた感動は凄かったし、寮母の仕事は最初こそあれだったけど今では毎日楽しい。
やっと自由な生活を手に入れた。
それなのに…。
私は5人の顔を思い浮かべた。
みんなのところに戻りたい。
泣き顔を見られない為に顔を下に向けた私を見て母は諦めたと思ったのか笑顔になった。
「さあ、帰るわよ」
「おい、待て。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 250人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2023年3月22日 22時
