夢 ページ14
合宿も無事に終わり日常に戻ったけど…
ピピピ…
無機質に鳴り響く電子音。脇に挟んだ体温計を取ると、
「38度…」
しっかり熱があった。
作間さんにうつされたな…これは…
まあ学校も休みだし、みんなも仕事でいないし、寝てよう。
「大丈夫?」
部屋で寝ていたはずの私はなぜか公園のブランコに乗っていた。
私に話しかけてきたのは正面から歩いてきた幼い男の子。
夕陽で姿ははっきりと見えるのに、顔だけは暗くて見えない。
ブランコのチェーンを掴む自分の手はなぜか小さい。
しかもなんだか不安な気持ちが溢れ出してきて、今にも泣きそうだ。
「泣くなって!大丈夫だから!迷子か?」
男の子の言葉に私は頷く。
「そっか。お前この辺に住んでるの?」
「…違う…パパとママとお兄ちゃんと旅行できたの…怖い…」
「落ち着いて。お前の家族も絶対お前のこと探してるから。そうだ、迎えに来るまで一緒にいてやるよ。」
「ほんとに?」
「おう。俺は⬛︎⬛︎。お前は?」
なんでだろう。知ってる言語で話しているはずなのに名前の部分だけが聞き取れない。
「私はA。」
「A、向こうで遊ぼうぜ。」
そうして男の子は私の手を引いた。
日が落ちるまで遊んだ。遊んでいる間は不安な気持ちなんて無かった。
「A!こんなところにいたのか!」
「お兄ちゃん…?」
「心配したんだからな!ほら、ホテル戻るぞ。…この人は?」
「⬛︎⬛︎くん。一緒に遊んでくれてたの。」
「そうか。ありがとう。君のご両親は?」
「あそこのホテルにいる。」
「君も早く帰れよ。行くぞ、A。」
「うん…でもちょっと待って、お兄ちゃん。」
「どうした?」
「⬛︎⬛︎くん、大きくなったら結婚して!」
「おい、A、いきなり何言って…」
動揺するお兄ちゃん。
「良いよ。絶対に迎えに行く。」
そうして彼と指切りした私。
「約束だからな!」
そう言った彼の顔が一瞬見えた。どこかで見たことのある笑顔。
布団から飛び起きる。夢だったのか。昔北海道旅行した時の夢。前も見たな。
その頃。
「全く、Aもロマンチストだよな〜。幼い頃に結婚の約束をした男の子の寮母として自分の妹を引き合わせるなんて。」
Aの兄と電話をするHiHi Jetsのマネージャーの田中の姿。
「面白いだろ。いや〜びっくりしたよ。田中がマネージャーしてるグループの子だって知った時は。頼みやすかったから良かったけど。」
Aの兄はにやりと笑みを浮かべた。
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作成日時:2023年3月22日 22時