動揺 ページ2
「Aだよ、好きな奴」
「え…？」
「聞こえてなかったか？お前が好きだって言ってんだよ」
「聞こえてるよ。好き？揶揄うのもいい加減にして」
いつものからかい？
でもそれにしては表情が真剣すぎる…。
すると蒼弥は私を壁際に追い詰め、両手を壁に置いた。
いわゆる壁ドンってやつ。
本当にする人いるんだ…
「これがからかいに見えるか？」
今までに無いほど蒼弥の顔が近い。
「そもそも好きって何？」
「この雰囲気見て分かんねーとかどんだけ鈍感なんだよ馬鹿」
「いや…だってそんな素振り１つも…」
「好きじゃねー奴追っかけてめんどくさいクラス委員とかやんないんだけど」
「冗談じゃなかったのそれ」
「ガチだよ」
脳の処理が追いつかない。
だって蒼弥は最初私の事が嫌いで、私の事を追い出そうとするほどで…。
和解してからは話せるようになったけど顔を合わせるたびに喧嘩ばっかで…。
「はしもっちゃんに素直になれって言われて決心付いてたけど本当はもっとちゃんとした時に言いたかった。お前のせいだぞ。」
「そんな事言われても…」
「で、返事は？」
「蒼弥はそういうのじゃなくて…憎たらしい弟みたいな…」
「あっそ。分かってたけど。つまりNOだな？」
「…うん」
これで蒼弥と気まずくなったらどうしよう。
一瞬そう思った。
次の瞬間、蒼弥の顔が一気に近付いてきた。
思わず目を瞑ってしまう。
「何目閉じてんの(笑)キスされるとでも思った？(笑)」
目を開けると、顔の近さはそのままで蒼弥はいつもの憎たらしい顔で笑っていた。
「そんな訳ないじゃん！」
「ま、そのうちAから頼んでくるようにしてやるよ(笑)惚れさせるから覚悟しとけよ。」
覚悟しとけよって言われても…
どうしよう、蒼弥のことなんて何とも思ってなかったのにドキドキが止まらない。
自分のちょろさに情けなくなってしまう。
そこからは蒼弥と目も合わせられなくて、無言で作業を行なったおかげですぐに仕事が終わった。
2人で生徒会に提出しに行き、そのまま帰る。
帰ると私と蒼弥の間に起こった事を誰も察する事なく普通に迎えられた。
「遅かったね、Aちゃん」
「蒼弥と委員で居残りさせられてて…(笑)」
「大変だね、クラス委員って…」
そう言って涼くんはチラッと蒼弥を見て、また私に視線を戻した。
「作ちゃんと一緒に適当に食材買ってきたから良かったら使って」
「ありがとう、涼くん。作間さんも。」
私はこの時、知る由も無かった。
これを皮切りに起こる出来事たちを。
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作成日時：2023年3月22日 22時
