つゆとこたへて＊ N.K (ページ23)

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先生の斜め後ろをのんびり歩く。
特に喋ることも無く。
でも、先生との沈黙は悪いものじゃなくて心地良い。

毎日のように見てるのに、毎日かっこいいって思わせる二宮先生ってほんとに狡い人。
そんなことを思いながら歩いていたらいきなり目の前にあったはずの廊下が無くなった。

体に強い衝撃が走って、どこかに打ち付けられたようだ。

「長谷川？！」

先生の焦る声が聞こえる。

なんかよくわからないけど体が痛い。

「長谷川？！大丈夫？！」

「大丈夫です。多分。」

あぁ、階段から落ちたみたい。
さっきと少し違う景色に自分で納得。

「怪我してない？頭とか打ってない？」

「ほんとに、大丈夫です…」

先生の目がキョロキョロとしている。
なんだかすごく慌ててる…？
全身を見て、私がどこも怪我をしていないのを確認して一息ついたみたい。

「無事で良かった…いなくなるかと思った…」

「先生？」

先生の頬を涙がゆっくりと流れる。
ただの生徒に対して、そんなに感情を入れ込むものなのか。

先生の涙は綺麗だけど儚くて、なんだか怖かった。
どこかに儚く消えてしまいそうで。

「先生、準備室行きましょう。」

「ごめん、」

次は私が先生の前を歩く。

「長谷川、気をつけて帰れよ。」

「はい。さようなら、先生」

準備室について、先生にさよならを言う。

この間のちょっと変な先生といい、今日の慌てた先生といい…
何かに怯えているようなあの瞳が忘れられない。

何が、先生にそんな顔させてるの。