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二宮side
長谷川を無事に送り届けて、家に帰ってきた。
誰もいない部屋は当たり前だけど真っ暗で、少し寂しさを覚える。
カチッと音を立てて電気のスイッチが入れば程なくして明るくなる部屋の中。
…片付けないとな。
散らかった部屋の中を見渡して、ため息をつく。
床に落ちたものを踏まないように重いジャケットを脱いでハンガーにかけて、硬っ苦しいネクタイを緩めながら冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
それからいつものテーブルの前に座る。
全部いつも通り。
プシュッといい音を立てて缶を開けて、ぐいっとビールを煽る。
「どーしてあんなこと言っちゃったかな。」
長谷川がよく似てるんだ。アイツに。
意思がしっかりしてるとことか、真っ直ぐな眼差しとか。
そのくせにどこか儚くていなくなってしまいそうなところも。
よく、似てるんだ。
顔や背丈は全く違うはずなのに、彼女を彷彿とさせる一つ一つにあの頃の胸の高鳴りが戻ってくる。
あれから恋なんてしないって決めていたはずなのに。
もうアイツを最後にするんだって決めていたはずなのに。
そんな決意なんてお構い無しに、長谷川に惹かれているのはなんでだろう。
「ねぇ…俺はどうすればいい…？」
アイツに問いかけても返ってくるのは静寂だけ。
手に持っていた缶をテーブルに置くと静かな空間にコツンという缶の当たる音が響く。
「俺は、幸せになっていいの…？」
あの頃は、このローテーブルに向かって肩を並べてお酒を飲んだのに。
「なぁ…答えろよ…」
一緒にご飯を食べたのに…
「答えろよっ！！！」
今はもう…全部一人なんだ。
返事なんて返ってくるはずもなく、全てを忘れたいがためにいつもより多く酒を飲んだ。
…そんなことで忘れられるはずなんてないって自分でわかっているのに。
自分の行動に呆れるけれど、それ以外の方法なんて思いつかないし。
どうとでもなれ。
こんな考え、アイツが聞いたら怒るんだろうな。
だんだん重くなる瞼を重力に委ねて、空き缶の並ぶテーブルに突っ伏した。
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作者名：舞蝶 | 作成日時：2018年10月21日 19時
