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「先生、もう1ついいですか……？」
「どうぞ？」
「進路、どうしたらいいか分からないんです」
担任の先生からもそろそろ決めた方がいいんじゃないか、とか。
周りの子もこの大学に行きたい、とか。
そんな中で未だに白紙のままの進路志望書を見て焦りを感じていたし、そんな現実からあ目を背けようとしていた。
「好きなこと、学びたいこと、やりたいこと、優先したらいいんじゃない？少なくとも俺はそうやって決めたんだけど。」
「……？」
「就職っていう選択肢は俺の中には当時なかったのよ。
でもさ、大学行くとなると4年間も授業料とか結構お金払うしさ。
それだったら本当にやりたいことをやろうって思って。それで大学で勉強してるうちに誰かに古典の楽しさとか、伝えられたらなって。」
「それで先生は、国語の先生に…？」
1番の理由はそれだよ、そう言って天井を見上げた。
……1番の理由。
他にも理由があるんだ、とは思ったけどそこは今突っ込むべきところではないだろうと思って、今は見過ごすことにした。
「あと、4年制大学なら4年間勉強出来ることじゃないと、通ってられないからね」
4年間大学に通うとして、中学よりも、高校よりも長いその時間で続けられること…
「長谷川がさ、本気でやりたいこと探してみたらいいんじゃない？」
先生の言葉はふわっと胸に染みて、今まで不安に思っていたことがちょっとだけ軽くなった気がした。
「本気でやりたいこと……」
「焦らなくていいと思うけどね。将来の夢なんて急いで決めるもんじゃないでしょ？」
あ、最終下校。
そう先生が呟いて、もう大丈夫？なんて聞く。
大丈夫です。
ひとつ、首を縦に振る。
「気をつけて帰ってね。また話なら聞いたげるから」
『話なら聞いてあげる』
いつもの言葉で先生は私を見送る。
ありがとうございました、そう言って先生に背を向けた。
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作者名：舞蝶 | 作成日時：2018年10月21日 19時
