5年い組の問題児は馬鹿ではあれど、鈍感ではないようです【忍たま乱太郎】

・ ページ22

竹谷側である NoSide



　『やぁ〜、満月に虫の声なんて

　めちゃくちゃふじょうがあるじゃないですかー』


　「いや、多分「ふじょう」じゃなくて「ふぜい」だろ


　風情は特別な読み方だからな」


　『えぇ？そうなの？じゃあ多分そうとも言う！』


　「ふははっ。

　なんだそれ」
　



　竹谷は少しだけ苦笑する。


　胸を満たしていた黒い感情が、
ほんの少しだけ洗い流されていくのを感じる。

　Aはいつでもそうだ。



　いつも馬鹿やって怒られている癖に、

　
　人の変化に鈍感ではない。

　一番に気がついてしまう。



　そんなことを考えていたせいで、

　反応が一瞬遅れてしまった。


　『―――竹谷。』



　不意に、やけに真剣な顔をしたAに名を呼ばれる。



　

　白い肌を月光に照らされて、

　長いまつげの影が頬に落ちている。




　良く見ると鮮やかな色をした宝石のような目が

　竹谷を映して、壊れそうに煌めいていた。






　「―――A?」




　Aは強い意志を閉じ込めたかのように

　結んだ口を、ゆっくり開いた。
　
　

・→←お気に入り登録してくださった方々へ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す