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目は開かぬまま、感覚だけ研ぎすます。
 ゆっくり、丁寧に、慎重に。





 伊作くんは、近くにいない。







 『うっし』




 目を開くと、夜の静かな気配が目の前に広がっていた。青白い月光が布団の白を生白く反射している。
 静かに上体を起こしてから、音を立てないようにして立ち上がった。
 そのまま足音を忍ばせて縁側へ出ていく。



 そうっと地面に足を伸ばしてから、ふと動きを止める。



 裸足だ。




 それでも迷ったのは一瞬だけ。




 いいや。このまま出ちゃえ。



 地面に降り立った途端、微かに心が浮くのを感じた。
 頬が緩み、口角が柔らかく持ち上がる。




 『はぁっ……久しぶりに、やるか』



 軽くその場で跳ねて、肩と首を回したり伸ばしたり。
 固くなった身体を念入りに解していく。この環境でうっかりやっちゃったら笑えないからね。

 今度こそぶっすりやられちゃう気がする、うん。自衛は大事。




 不必要だと思えるくらいに準備体操をしてから気を取り直す。

 


 ふうっと口をすぼめて息を吐き出し、肺の空気を空っぽにする。
 そして鋭く息を吸い、できる限りの酸素を肺に送り込んだ。




 月の下を風を切って駆ける。
 

 時たま、くるりと宙返りしたり飛んで空を蹴ったりしながらも、消して足は止めない。
 
 私は呼吸を紡ぐ。風を追い越す。







 ………ん?今、何か聞こえた気がする。

 思わず足を止めて、耳に意識を集中した。
 今、確かに鼓膜が震えた。風の音じゃない。忙しい足音と―――呪文……?






 「いっけいけどんどーんっ!!!」




 段々、音の輪郭がはっきりし始めて確実に私の鼓膜を震わせている。

 こんな夜中に……誰だ?






 「勝負だどんど〜ん!!」




 『うわ、まじか』




 私の目に映ったのは、こちらに猛突進してくる男の子だった。






 

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設定タグ:天女 , 忍たま乱太郎 , RKRN   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 更新待ってます! (4月21日 0時) (レス) @page42 id: c045f3c206 (このIDを非表示/違反報告)
ほまりあ - めっちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください!応援してます! (12月13日 17時) (レス) @page40 id: c2cc9f3cdb (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - らびさん» あぁあぁ…………!!私はなんて罪深いことを…!!すみません、レスが遅れました!!!これからもお待ちいただけると幸いです〜!!!コメント有難うございます!! (11月26日 21時) (レス) id: 17751e89f9 (このIDを非表示/違反報告)
らび(プロフ) - どうしよう、Sな伊作にハマりそうです😭とっても素敵♡ (11月12日 17時) (レス) @page28 id: a37f698238 (このIDを非表示/違反報告)
忍たま好き(プロフ) - 終わりなんですか? (11月4日 17時) (レス) @page39 id: 6c4f449978 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年3月5日 0時

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