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「A、A」
とろりと温かな微睡みの中で誰かが呼んでいる。
暗闇に一筋の光が指すような希望。甘やかなその声は慈しみと憂いを湛えていた。
その光に手を差しのべる。
掴んだ―――と、思ったら。
見知らぬ天井だった。
『う゛…?あれ?』
ここは、どこだろう。
意識と記憶がぐしゃぐしゃで、思考の輪郭がぼやけている。
「Aさん……?」
聞き覚えのある柔らかな声が、問いかけるようにして私を呼ぶ。
身体を起こして、その姿を確認する。
「ちょっと!急に起き上がっちゃ駄目だよ!」
『あ、ごめんごめん』
背中に手を当てて、強制的に身体を布団に沈められる。
慣れてるし、別に平気なんだけどね。
眉尻を下げて、心の底から安堵したというような顔をしている伊作くんを見て、
段々記憶と脳がはっきりと整理されて機能していく。
そうだそうだ。私、刺されたんだっけ。
まあ――刺されたというより、刺されに行ったというか刺したというか…。まあ、そこはどうとでも。
「Aさんの回復能力は以上だね。出血ももう止まっている。
人間が臓器に穴が空いたら殆ど望みはないんはずなんだけど…。」
不意に伸ばされた手が、前髪をかき分けて額に触れる。
「うん、熱も下がっている。1日で意識を取り戻すなんて信じられないよ……。」
『あ、ちょっとそれ。本気で気持ち悪そうな目だよね?傷つくわぁあ……』
「全く……後でゆっくり話をしたいんだけど」
何だか今日は冷たいな。口調が淡々としていて素っ気ない。
伊作くんは小さく溜め息をつくと、立ち上がった。
「君と話をしなければならない人がいてね。そっちの方が優先かな」
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凛(プロフ) - 更新待ってます! (4月21日 0時) (レス) @page42 id: c045f3c206 (このIDを非表示/違反報告)
ほまりあ - めっちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください!応援してます! (12月13日 17時) (レス) @page40 id: c2cc9f3cdb (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - らびさん» あぁあぁ…………!!私はなんて罪深いことを…!!すみません、レスが遅れました!!!これからもお待ちいただけると幸いです〜!!!コメント有難うございます!! (11月26日 21時) (レス) id: 17751e89f9 (このIDを非表示/違反報告)
らび(プロフ) - どうしよう、Sな伊作にハマりそうです😭とっても素敵♡ (11月12日 17時) (レス) @page28 id: a37f698238 (このIDを非表示/違反報告)
忍たま好き(プロフ) - 終わりなんですか? (11月4日 17時) (レス) @page39 id: 6c4f449978 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜 | 作成日時:2023年3月5日 0時