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久々知said
呆然とした呟きは頼りなく震えて、寂しそうに揺れていた。
目の淵にはみるみる涙が盛り上がり、溢れる。けれども泣いているという表現は正しくない。
おそらく彼女は自分が涙を流していることに気が付いていない。
大きく見開いたままの目は孤独を映して、悲壮と寂寥に暮れていた。
「Aさん。」
伊作先輩の声に怯えたように肩を震わせる。
先輩の腫れ物に触るような目と周囲の困惑した表情で、察したらしい。
反射のような速度で手が顔の高さまで上がり、指先が雫に触れる。
すると彼女は、表情に嫌悪を押し出すようにして唇をかみしめた。
袖口を乱暴に目に押し当てて拭う。
「腫れちゃうよ」
伊作先輩が遠慮がちに、それでも恐らく的確な強さで彼女の手を摑まえる。
「別にいい、困ることは一つもないから。離して」
彼女は苛立ったように眉をひそめた。相変わらず涙は流れつ綴けている
「だめだよ。困ることはないけど良いことも無いでしょ」
「少なくとも、同情引くみたいにこれ見よがしに
みっともなく泣いてるよりは百倍ましだから。分かったらさっさと離して」
先輩の手を乱暴に振り払う。完全で純粋な拒絶に先輩は口を噤む。
彼女のこれは素なのだろうか。
おちょくるようでありながらも存在していた、大人びた穏やかさと毅然さが消えている。
これじゃなんというか…あまりにも痛々しい。
口を開く。怖くはなかった。むしろ、胸に巣食ったのは緊張とほんの少しの期待。
「ねえ、天女様。」
目が合う。呼吸の音が小さく胸に共鳴する。
「約束、しよう」
これは破滅か回生か。
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凛(プロフ) - 更新待ってます! (4月21日 0時) (レス) @page42 id: c045f3c206 (このIDを非表示/違反報告)
ほまりあ - めっちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください!応援してます! (12月13日 17時) (レス) @page40 id: c2cc9f3cdb (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - らびさん» あぁあぁ…………!!私はなんて罪深いことを…!!すみません、レスが遅れました!!!これからもお待ちいただけると幸いです〜!!!コメント有難うございます!! (11月26日 21時) (レス) id: 17751e89f9 (このIDを非表示/違反報告)
らび(プロフ) - どうしよう、Sな伊作にハマりそうです😭とっても素敵♡ (11月12日 17時) (レス) @page28 id: a37f698238 (このIDを非表示/違反報告)
忍たま好き(プロフ) - 終わりなんですか? (11月4日 17時) (レス) @page39 id: 6c4f449978 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜 | 作成日時:2023年3月5日 0時