アクリルケース。 ページ7
・
「…あと、多分なんで?って思ってるかもしれないけど、」
北斗はそこまで言って口を噤む。
「なに?」
「…なんで俺がここまできても手を出さないかわかる?」
そう、北斗と私は未だに清い関係だ。
手は繋ぐ。ハグもする。一緒にも寝る。キスもする。
だけどその先はまだで。
やっぱりたまたま話が合う女が現れただけで大して魅力も感じないのかな、って考えた事もある。
「わかんないよ」
私がそう答えると言いづらそうに口を開く。
「…俺結構欲深いタイプでさ、知ってると思うけど依存はしちゃうしAの世界にいる人間が俺一人だけになればいいのにって考えたりもする。」
「…うん」
「引かれるの承知で言うけど、頭の中ではAをアクリルケースに飾ってんの」
その言葉は独特な感性を持った北斗ならではで、
どういうことだろうと考える。
「大事なものにホコリがつかないように、誰にも触れられないように傷がつかないように、俺しか見れないように閉じ込めてんの。」
"本当にそうしたいくらいなんだけどね?"って少し笑いながら。
それは、北斗なりの一番の束縛の言葉だった。
・
173人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:やま x他1人 | 作成日時:2019年6月23日 0時