［完］もう二度と会いたくなかった3【佐野万次郎】

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ーside 三ツ谷ー



ドラケンからAに会ったという情報を聞いて心臓が飛び跳ねた。

12年前、Aが拉致られ、突然俺たちの前から消えた。





“頼む、もうAには会わないでくれ”





マイキーにそう頭を下げられて、一眼見ようと見舞いに行こうとしたのも辞めた。

今日まで彼女を忘れたことはなく、たまに空を見上げては「元気だろうか」と思い出に浸っていた。

そんな彼女が今近くにいることを知って、俺は会いたい一心だった。



「今日道場は？」


「バックれた」


「じいさん泣くぞ」



マイキーは東卍解散後、高校には行ったり行かなかったりを続けなんとか卒業し、佐野家の道場を継いだ。

かつて無敵と謳われただけあり、入門している子供は多い。



「…ドレス、綺麗だな」


「だろ？昨日タケミッチ来たけど、作り途中だっつーのにボロクソ泣いてて笑ったわ」


「簡単に想像できるな」



マイキーはアトリエの端にあるソファーで足を伸ばしながら黙って窓の外を見ていることが多い。

話しかけられたことに驚いたものの、俺も返答する。今日はやけに流暢だなと思った。



「マイキー、2人の結婚式来るんだよな？」


「…あぁ」


「んだよ、その返事」



マイキーはそれ以上続ける気はないのか、急に黙り始め、俺も追及するのを止めた。



「(ほんと、何考えてんのかわかんね…)」



Aが消えてから、初めは「これが自然な流れなんだ」という様にマイキーはいつも通りだった。

しかし、月日が経つにつれて、だんだんと“何か”が欠けていき、今では様変わりをしているのは目に見えてわかる。

ドラケンともどうしたものかと随分と頭を悩ませたことも多かったが、マイキーの気持ちを真に理解できたのはもうエマしかおらずそれを見守るだけだった。

そんな、12年。俺はデザイナーの卵として日々精進し、それぞれが自分の道を行った。

そんな中、元東卍メンバーが口を揃えて言うのが「2人だけが取り残された」。そんな呆気ない一言だった。



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