［完］もう二度と会いたくなかった【佐野万次郎】

愛しい ページ35

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ーside 真一郎ー



久しぶりにAの母さんと父さんに会った気がする。

2人ともやっぱり彼女にどことなく似ていて、忙しくて疲れているはずなのに明るいのは相変わらずだった。



「真一郎くんの方が疲れてるのに、この子ったら…」


「いや、お構いなく。そろそろお暇します」


「すまないね、せっかくの誕生日に」



Aは再び眠りの世界に入り、ソファーで寝てしまった。スピーと無防備に眠る姿は本当に可愛い。



「そんなことないっすよ。いつもAには笑わされてるし、楽しいです」


「ふふ、ありがとう」


「………あの、俺がこんなこと口出すのは場違いですけど」



久しぶりにAの両親を見て、なんとなく安心した。

それと同時に、いつか伝えたいと思っていたことを気がつけば口にしていた。



「Aとの時間、もう少し増やしてあげてください。アイツ、口には出さないけどやっぱり寂しそうなんで」


「…ありがとう、いつも面倒を見てくれて」


「ありがとう、真一郎くん。佐野さんにもよろしく伝えておいて欲しいわ」


「いえ、こちらこそいつもありがとうございます。それじゃ、失礼します」



















.



















家に帰って、部屋でタバコに火をつける。



「(…久しぶりに吸ったかも)」



Aはタバコが嫌いだからなるべく控えていたが、今日はなんとなく吸いたかった。



「可愛い」



さっきじいちゃんに撮ってもらった写真を眺めながらそう呟く。

俺が真ん中に座って、エマやまんじろーが周りにいて、Aが俺に抱きついてるその写真は最高の誕生日プレゼントだった。



「(絶対ぇ、イイ女になる)」



いつも思ってるけど。



「(けど…)」



アイツには、俺じゃない気がする。万次郎の方がいい。Aのことはもちろん大好きだけど、なんか違うんだよな。

まあ、もしアイツに貰い手がなかったら一番に掻っ攫うくらい。



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