いつまでも……side T.M. ページ14
.
「ねぇ、どうしてそんなにきれいな目をしてるの?」
なんてそんなこと、かわいーいまんまるい目をしながら聞かないでよ。
ちいさな口もまあるく開いてて、そこからちいさな歯がのぞいてる。
「生まれた時からイケメンだったから、今さらわかんないなー」
オレの冗談めかした言葉にも真剣な顔で頷いて。
「そうだよね、生まれた時からその顔だもんね。慣れちゃうよね」
「……本気で言ってるよね?」
「え、本気よ?」
きょとんとして言い返す、そのくちびるに目を奪われる。
「見る度に思っちゃうの。なんでそんなにきれいな目なのかな、わたしが貴久くんだったらどう思うのかなぁって」
本気、らしい。
付き合って何年? もう1年?
いつまでも新鮮に感動してるA。
変わってるなぁ、面白いなぁと思うと同時に、死ぬほど愛しい(なんて、恥ずかしいから絶対言わない)。
「いや見る度イケメンだなぁと思うよ」
「だよねぇ」
「つっこんでくれーーー」
「え、つっこむの?」
「いやいいけどさー。すべりたおしてる気になる」
「え、それは慣れてるのでは」
くすくす笑いながらそんなこと言うAに、安心してこちらも怒れる。
「なんだとー誰がすべりちらかしてるんだ」
「そこまで言ってないよぅ」
「そうだっけ?」
なんでAといるとこうなるのかな。やわやわまるーい空気になってしまう。
ほんとは、そのくちびるに手をふれて、くちびるをあわせて、ぜんぶにキスを落としたいのに。
そんな雰囲気じゃ、ないね。
「でも貴久くんは、鏡見ないと自分の顔見られないから、残念だね」
ニコニコしながら、そんなこと言うA。
「わたしなんていまも見られるんだよ? 羨ましいでしょ?」
……ばかだなぁ。
オレなんてAの顔見てたいに決まってるじゃん?
そんなことにも気がつかないで、いばって笑ってるAがむちゃくちゃ愛しくて、思わず、ぎゅっと抱きしめる。
「えー、どしたのたか」
言葉の途中でくちびるをふさぐ。
やわらかいくちびる。
遠慮がちなちいさな舌。
腕の中にすっぽり入ってしまうやさしい体つきも。
なにもかもこんなに愛しい生き物っている?
キスの途中でそっとつく吐息も、指に絡むつややかな髪も、あたたかな頬もなにもかも全部。
俺のために存在してるとわかる。
「たか、ひさ?」
「ずーっと見てていいよ、オレの顔」
ふ、って、照れくさそうに笑った顔が可愛くて、抱きしめている腕に、力を込めた。
ねぇ一生、オレの顔だけを見ててね。
69人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:由乃 | 作成日時:2020年10月27日 11時