ヤキモチ2 ページ10
「ダメダメ、ちゃんとこたえて!」
「こたえるよ。なに?」
「あんなのもうやらないで!!」
「ふふ、うっくく」
笑いを堪えてるような(いや完全に堪えている)顔で、わたしを見て貴くんがこたえる。
「Aちゃんのアウトルールがわからない」
「わかって!」
「むちゃいうー。えーと、ファンが一番なのOK、
ファンにサービスOK、デート企画OK、
外デートNG OK、写真NG OK、共演女優さんNGなし、葉っぱ隊OK、夫婦役 OK、キスシーン OK、で、まなぶくんの匂い嗅ぐのNG?」
「えぬじーだよっ!!」
「わからねーー」
そういいながらぽすぽすわたしの髪を叩いて、今度はわははと思いきり笑う。そのすこやかな口元と目の優しさに、ヤキモチは少しだけ、減る。
「え、じゃあどうしよう。どうすればいいってある?」
「もうまなぶくんの匂い嗅ぐの禁止!!」
「----わかった、ごめん」
そう言うと、貴くんはもう一度わたしをぎゅっと抱きしめた。自分の鼻の先でわたしの鼻先をとんとんとなでるようにつつく。
「Aのわがままはいつも可愛いなぁ」
「ごまかされないからねっ」
「わかってるよ? いつも、できないことは望まないんだから」
ちがうもん。
嫌だったことはたくさんあるけど、でもでも好きな方が強いから。
見られなくなるほうが嫌だから。
でも、何にも言わないなんて性格的にむりだし。
だからせめて言える時にはなんでも言ってやろうって言う、僻み根性からなんだから!!
勝手にいい方に考えちゃだめ!
「だいたいあんな表情さ!」
「どんな?」
「あんな、なんか、せくしー?な?」
貴くんは笑う笑う笑う。心地よくて可愛らしい笑い声で。安心してしまう声。
こうやって言いたいこと少しでも言って、ごめん、って言ってもらって笑ってくれると、ヤキモチは小さくなる。たいしたことないように、思えるから。
いっつも甘えて、言っちゃうんだ。
「あれセクシーに感じるの、撮り方の問題と思うけど」
「でも表情もなんかあれだよ!」
「俺にセクシーな表情あるとしたら、一番見てるのAちゃんじゃん?」
「--------!」
不意にそんなこと言う。
不意だとわたしもつい、どうでもいいことこたえてしまう。
「わ、わたしあんまり見てないよ!」
「ああ、暗くしてるから。電気つけたままする?」
「!」
ぶりっ子だと思われてもいいから、それだけは絶対に嫌だ!
こんな完璧な顔と体持った人に、あんな顔やら見せられるもんか!!
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作者名:由乃 | 作成日時:2020年4月20日 15時