NEWS日和 (ページ28)

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夜の検温.……T.M ページ28

｢夜の検温の時間です｣

｢こんばんは｣
低い声、なのに可愛い感じで増田さんはやってきた。

｢体温どうだった？｣
｢7度6分です｣
｢あ、ちょっと高くなっちゃった？｣
目を丸くして言う、中指でポリポリ、と前髪あたりをかいてから、手元の紙に何かを書きとめる。
清潔そうな爪だなあ、なんて、思わずじっと見てしまう。

｢ちょっと血圧測らせてね｣
増田さんは大きな手で血圧計をとりだすと、ゆっくりとした動作で私の手に巻いた。一つ一つが丁寧な動きで、すごく親切にしてもらってる気になる。

｢脈早いねぇ。いつもだったりする？｣
｢わりとそうかも、です｣
増田さんは私をちら、と見て、ちょっとほほ笑むと、そうかーとちいさく言った。

｢自律神経系、あまり強くないのかな。熱あると体辛くなっちゃうね｣
それから、
｢どこか痛かったりしない？｣と言った。
｢痛みは無いです｣
｢そっか｣

そう言ってから、私の目をじーっと見つめながら、続けた。
｢夜は熱があがりやすいかもしれない。つらくなっちゃったら呼んで。今日は俺います。Aさん気にかけとくけど、不安だったりつらかったりしたら、いつでも呼んでください｣
｢ありがとうございます｣
｢そんな他人行儀な！ふふふっ｣
言ってる意味はよくわからないが、たぶん照れ隠しなんだろうなと言うことはわかった。
ニコニコ笑う顔が子供みたいでとっても可愛い。なのにシーツに置いてある手はごつくて、すごく男っぽいのが、なんだか、すごく、どきどきした。

｢はやくよくなりますように｣
そんなまっすぐな言葉で行ってしまう。増田さんが行ってしまったあとは、なんだか月が隠れたあとみたいに、ほの暗い空間だけが残った。