ヤキモチ４ ページ21
｢シゲ｣
｢まだなにかー｣
ふざけた感じで答えるシゲに、体全体でうわっと抱きついてみる。
｢わ、ビックリするだろお前！！｣
｢ふふふ、だいすきー。いちばんすきー｣
｢アナタもね、もっと趣味作っていいのよ｣
｢シゲさんで手一杯ですー｣
こんなふうに気楽に言えたことってないかもしれない。いつも、好きって言う時は慎重にしてた。あんまり重いと思われないように。
でも、なんか、今日のシゲがすごく可愛くてやさしいから。
言ってしまえー！
からだを離して、彼を見つめながら言ってみる。
｢だいすき。世界一でいちばん、シゲが好きみたい。自分よりシゲがいちばん、すき！｣
｢酔っ払いか？！｣
シゲも少し元気そうな顔になってニコニコしてる。わーいと思って、わたしもニコニコになる。と。
｢隙あり！｣
｢どこに！？｣
シゲは驚くわたしにニコニコと椅子からタックルを食らわせる。その勢いで、ソファから二人ずり落ちてしまった。上に乗られてしまって、ちょっと重い。
｢もー、疲れてるならいい加減にしてくださいー。コーヒーでものんで、休も？ どいて？｣
｢嫌だね！｣
そう言ってシゲが私の両手を床に押付けたので、
あれ？ってなった。
あれれ？
なにこの態勢？
ぽかんとシゲを見上げたら、やさしいキスが降ってきた。初めて落ちてきた雪みたいな、かすかにふれるキス。
｢………シゲ？｣
｢好きだよ｣
そう言って、もう一度キス。
やさしくて淡い、花びらみたいな。
それからもう一度、今度は探るみたいなおずおずした、深いキス。
｢シゲ？｣
ちいさな声で名前を呼ぶと、もっと小さい声で囁き返された。
｢A？｣
｢は、い？｣
｢疲れてるときって、したいって知ってた？｣
耳元で、すごく小さな甘い声で。
シゲのあの、特徴あるやさしいこえで。
｢いい？｣
だめな時なんてあるわけないじゃないですか？
｢だいすき｣
ささやくと、ふわっと微笑まれた。
それは思わず息を飲んでしまうほど、綺麗な笑顔だった。
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作者名：由乃 | 作成日時：2020年4月20日 15時
