ヤキモチ２ ページ19
シゲが、少し疲れて潤んでいる目でこちらを見ている。黒い黒い瞳。
い、イケメン。
「あのね、特に気にしてもらうことでも
ないんだけど」
「そういうのいいから！」
あ、もうちゃんと言うしかないな。
こうなるとシゲアキさんは結構しつこいので、
わたしはもう諦める。
「あのね」
「はい」
「シゲは、好きなことがたくさんあって、
いいなーって」
「は？」
「アイドルのお仕事でしょ？ 書くのも読むのも好きだし、料理だって好きでやってるし、釣りもだよね？ 時間がいくらあっても足りないよね？
それがさ、うらやましい」
「Aだって趣味あるでしょ？」
「あるけど」
ウインドーショッピングとか。
甘いもの食べに行くのも好きだし。ドラマ見るか？ そんなもんかなぁ。わりとふわふわした、趣味っていえるほどのこともないことならある。
シゲのそれとは、なんか、違うのが。
「でもね、なんか違うの」
「なにが？」
律儀に返事をくれるシゲ。
執筆用の椅子、ゴロゴロの車輪がついてるやつで、シャーとわたし専用の一人がけソファの前までくる。目線が同じで話を逸らしにくい。
｢うーん、わたしの趣味はただの趣味、みたいな｣
｢……それのなにが俺と違うの？｣
｢だって、シゲの中の趣味の割合って高いじゃない？｣
｢うーん、まあ、そうね｣
｢わたしのはそれほどでもないっていうかね｣
あれば嬉しいけどなくても平気って言うか。生活の彩りではあるけどそんなにかじりつくものじゃない。シゲみたいにめちゃくちゃ楽しい！！って瞬間、あんまりないと思う。
｢うまく説明出来ないんだけど｣
グダグダになってしまうわたしの言葉を、シゲは真面目な顔で聞いてくれる。くりっとした目の上で、綺麗なまつ毛がのびていてなんだか儚げだ。疲れているのが、色っぽい。
｢わたしのなかは、シゲばっかりだ｣
ああ、そういうことか。
ヤキモチ妬いてたのか、わたし。
わたしばっかりシゲのこと考えてて、シゲは趣味に気持ちを割く余裕があるじゃん、って。
やだー、趣味にまでヤキモチ妬くなんて、めんどくさい女！！
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作者名：由乃 | 作成日時：2020年4月20日 15時
