ヤキモチ3 ページ16
一瞬黙ったかと思いきや
ぼーん、と抱きついてきてひしっとわたしを抱きしめる。そしてぎゅうぎゅう抱きしめてくれながら、よく通る声でこう言った。
「かーわいいー、なになに、俺のことが、可愛く見えた??」
「い、いっつも、だよ」
「えー、いま? いつも? どういうとき? かっこいい方がうれしいけどねっ」
「いまもだけど」
「やべっ、いまも? 俺、そう?」
手を離して、ちょちょっと髪を直したりして、決めポーズの顔でわたしを見てみる祐くん。が。めちゃくちゃ、カッコいい!!!
「や、いまは、いまは、かっこいいですが!」
「やった! 敬語に! Aの本気だー」
「もうー」
なんでこうなるの。
なんかこう、思ってた展開と違うし、全然別れ話する雰囲気でもない。
というかこうなるともう、自分でもなんで別れたいと思ったのかよくわからない。
わたしは勇気を振り絞って、言ってみる。
「ゆ、祐子が」
「え?」
「祐子が、可愛いの!!」
「ゆーこ?」
眉間にシワを寄せて黙り込む祐くんが、しばらく考えこんでいる。
この間に、自分のペースを取り戻さなくちゃ。
わたしは深呼吸して、祐くんを見つめる。
「……ごめん、ゆうこ?ちゃんに聞き覚えがない」
「祐くんのことだよ!」
「え?」
俺?と自分を指差して、たっぷり十秒は黙ったあと、あっはっは、といつもの大声で祐くんは笑い出した。
「なに言ってんのAちゃん」
「本気で!言ってる!! わたしの百倍可愛い!!」
「なんでよ、Aのが可愛いって絶対」
「そんなわけないよ!」
「そりゃ、祐子はすごくがんばったし、自信もあるけど!」
笑いながら、祐くんはわたしの頭をポンポンとたたく。
「Aの方が絶対可愛い。100パーセント可愛い。俺が見つけた人だよ?」
「でも」
「だいたい、祐子はちょいかたそう。Aちゃんは、ほら、やわらかーいでしょ?」
そう言って、頬をむにゅっと、指でつぶして変な顔にされる。
「にゃめてーおー」
「ほら、こんな表情でも、めちゃくちゃ可愛い」
口がむにゅ、と出たブサイク顔させられたわたしのくちびるに、ちゅ、と軽いキスをして手を離す。
怒っていいのか恥ずかしがるべきかわからなくて、わたしは祐くんの肩に顔をくっつける。見られないように。
48人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:由乃 | 作成日時:2020年4月20日 15時