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『ね、A…
ちょっとこっちに来て』
食事を終え、後片付けが済んだところで
私は翔ちゃんに呼ばれた。
エプロンで手を拭きながら
翔ちゃんが座っているソファーの前まで行くと
翔ちゃんは私の手を優しく引き
ソファーに座るようにうながした。
「どうかしたの？」
『それは、俺のセリフ。
A…、何か悩んでいることがあるんだろ？』
「え…？な、ないよ。
さっきも、そう言ったでしょ？」
『うん、聞いた。
だけど、それが嘘だとわかってる。』
「……」
『Aはさぁ…
自分で気づいてないかもしれないけど
話しをごまかす時、
いつも以上に多弁になるし
絶対に俺の目を見ない。
ほら、今だって、俺から視線を逸らしてる』
「え…？」
そこまで言われて
私は翔ちゃんへと視線を向けた。
その時になって
自分が無意識のうちに
翔ちゃんと目を合わせないようにしていたことに気づいた。
『ねえ、A…。
俺はAにとって何？』
「翔ちゃんは私の大切な……」
『その後に、“彼氏”という言葉が続くの？』
「うん…」
『そっか』
翔ちゃんはコクリとうなずくと
私を見つめ優しく微笑んだ。
『そう思うなら、ちゃんと話してよ』
「……」
『俺は、恋人同士ならそういう悩みを
一緒に解決していくもんだと思うよ。
Aが悩んでいることなら
俺も一緒に悩みたいし…
もし、俺に解決できないことでも
Aの悩みを解決する手助けはしたいんだ』
「翔ちゃん……」
『ほら、こっち来いって』
ギュッと胸に抱きしめられると
自分がどれだけ翔ちゃんに愛されているかが
分かる……。
「あの、ね……」
『ん？』
翔ちゃんの背中に手を回しながら
ちょっとだけ力を込める。
聞こうか……
聞いてしまおうか………
きっと、聞けば翔ちゃんは
きちんと答えてくれる。
翔ちゃんだから
ごまかすこともなく正直に…
だから……
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作者名：ミイ
| 作成日時：2016年12月7日 22時
