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そりゃあ…翔ちゃんはアイドだし
過去に忘れられないくらい好きな人が
いたって不思議じゃない。
好きな人どころか
運命の彼女だって…。
でも、今まで翔ちゃんは
そういった素振りさえ見せなかったから
こんなこと考えもしなかった…。
もちろん、前に好きな人がいたとしても
今は、私のことを好きでいてくれていることは、わかっている。
だけど…
どうしてだろう？
過去に、翔ちゃんが忘れられないくらい
好きな女の人がいるという事実が
こんなにショックだなんて……
『A？…おーい、A？』
ハッとしたと同時に
私の前に手が現れ
読んでいた本が取られた。
ふと顔を上げると
目の前には翔ちゃんが立っている。
「…翔ちゃん、」
『なに？どうした？
ボ〜っとして…
その様子じゃ、俺が帰って来たことも
気づかなかっただろ？』
「ごめん…」
翔ちゃんの言うように
全く気付いてなかった。
『どうした？
もしかして、体調が悪いとか？』
「えっ？ううん、大丈夫だよ」
首を横に振って否定したけど
翔ちゃんは、私の額へと手を伸ばしてきた。
『熱はなさそうだな……』
「だから、本当に大丈夫なんだって」
『そうなのかなぁ…
じゃあ、何か悩みごとでもあるとか？』
「え？」
一瞬、ドキッとした私。
『あー、やっぱり悩みごとかぁ…
俺でよかったら――…』
「な、ないよ！
悩みなんて、全然ない！
ほら、ちょっと、疲れちゃってただけだから 笑」
私は笑って
翔ちゃんの視線から逃げるようにして
夕飯を用意するフリをしながら
キッチンへと向かった。
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作者名：ミイ
| 作成日時：2016年12月7日 22時
