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『ごちそうさまでした。』
お行儀よく手を合わせて、そう言った翔ちゃんが…
両手を伸ばしてそのままゴロっと横になった。
「翔ちゃん、食べてすぐ横になると牛になっちゃうよ」
『右を下にして横になると、腸への消化の流れがスムーズになるから、手助けになるんだって』
「へー、そうなの？」
紺色の麻で仕立てられた浴衣を着てる翔ちゃんは、すごく似合ってる。
やっぱりなで肩は、着物が似合うんだなぁ…
いや、違うか…
カッコイイ人は何を着てもそれっぽく着こなせるんだ、と改めて感心する私。
緩めに着ているせいか、胸元が少しはだけていて…
なぜかそれが妙にセクシー…と言うか。
よく男の人はチラリズムに弱いって言うけど、女性だって基本そうなのかもしれない。
あんまり、見ちゃいけない…と思えば思うほど、自然に視線がいってしまう…。
でも、基本、最後はやっぱり翔ちゃんの顔に見惚れてしまう。
そのおデコも、眉も、目も、鼻も…
翔ちゃんの顔の全てが大好きだけれど、敢えて一つ挙げるとすれば、やっぱり唇が一番好きかなぁ…
そのプクッとした唇がどれだけ柔らくて、どんな風に私にキスしてくれるか…
思い出すだけで、頬が熱くなって…
自然と自分の唇を指先で触って、翔ちゃんを見つめてた。
『何？』
一人妄想の世界に入り込んでると、その思考を遮断した翔ちゃんの言葉が聞こえた。
『…俺と、キスしたくなった…とか？』
悪戯な視線を向けて、クスッと笑う翔ちゃん。
「………っ！」
あまりにも図星な問い掛けに返す言葉も浮かばない私…。
『っつーか、否定しろよ (笑)』
「あ…、う、うん」
『そんなふうに見つめられると、ちょっと俺も困るんだけど (笑)』
「…ごめん…、」
言われなくたって、分かってるもん…
私は翔ちゃんから顔をプイっと背けてあくまで平静を装った。
『…って、いうのは嘘で……そろそろさぁ…』
背を向けた私の肩に触れた翔ちゃんの手が
そのまますっぽり背後から私を包み込んだ。
『二人で、露天風呂入ろうよ？』
翔ちゃんが、私の耳元で甘えるようにそう言った。
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作者名：ミイ
| 作成日時：2015年6月18日 0時
