心のコップ ページ4
.
―――と。
聞こえてきた、ドアの開閉音。
「え、ウソ……」
驚いて振り向くと
丁度リビングに入ってきた
翔ちゃんと目が合った。
『…A』
「あ……れ、翔ちゃん？」
『そんなびっくりした顔して、どうしたの』
少し照れたように笑う翔ちゃんが
クリスマスツリーの前に立ち
『ツリー飾りつけてくれてありがとう…』
なんて言って
そのまま、少し冷たい手で
そっと私の頬に触れると
『元気だった？』って言葉をくれる。
「うん、……」
私の心のコップが
『ただいま』
翔ちゃんに触れられることによって
注ぐ気持ちが大きくなっていって。
「おかえりなさい…」
『起きててくれて、よかった』
嬉しそうに微笑みながら
翔ちゃんが、背中に腕を回してくれた。
ーーその瞬間。
心のコップから、気持ちがあふれる…
「……お…疲れ、さま。……会いたかった」
『うん、俺も会いたかった』
くすりと笑う翔ちゃんが
『寝顔はお互いに見てるけどね」と
耳もとですごく小さな声で言うから
それがまたくすぐったくて
私は翔ちゃんの胸に顔を埋めた。
「あのね、私は、翔ちゃんの寝顔だけじゃ…
足りない…かも」
そんなこと言ったら…ダメかな。
「…疲れてるのに、変なこと言ってごめんね」
と付け足すと
翔ちゃんは少し沈黙して
それから
『Aも俺と同んなじ気持ちで良かった。
俺もAの寝顔だけじゃ、
元気が出ないんだよ』
顎に添えられた手に誘われて顔を上げると
翔ちゃんは
「そーゆーことはちゃんと言えよ」と
低い声で囁いてから
私に優しいキスをくれた。
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作者名：ミイ
| 作成日時：2014年1月18日 0時
