電話 ページ22
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翔ちゃんが出かけた後
飲みかけのコーヒーが入った
マグカップを手にとり
テレビを付けると
クリスマスソングが聞こえてきた。
ああ…そうか。
今日はクリスマスイブだ。
世間一般では、振替休日で仕事がお休みだけど
…今日は月曜日。
翔ちゃんがニュースキャスターをつとめる
あの番組がある日だから
必然的に彼の帰りも遅い曜日。
‘‘今日帰ってきたらAを起こすから、
一緒にスパークリングワインで乾杯しような”
そう言った翔ちゃんの言葉を思い出した途端
テーブルに置いたままの携帯が震えて
誰からかなぁ…とディスプレイを見ると
さっき、出かけた翔ちゃんからだ。
.
「もしもし？」
‘‘ もしもし、A！？”
「翔ちゃん、どうしたの？」
少し焦ったような彼の声音に
何か忘れものをしたのかと思ったら
『今日は、出かける用事とかある？』
「ううん、特にないけど…あるとしたら
夕方、買い物に行くくらいかな」
『悪いけど、今日は出かけないで家にいて？』
ふだん、そんなこと言わない翔ちゃんが
なんでこんなことで電話してくるんだろう。
「…何かあった…？」
‘‘なんもねーよ…ただ、今日は雪降るって言ってるから外に出て転ぶとあぶねーし(笑)”
「転ぶって言っても、私は雪国育ちだよ」
‘‘知ってる、でも俺が心配だから…”
携帯から聞こえる翔ちゃんの声が
本当に心配してるみたいで
「うん、わかった。
今日は、翔ちゃんの言いつけを守って
ちゃんと家にいるね」
‘‘何かあったら、すぐ連絡して？”
「うん」
‘‘…それから”
.
何か言うのをためらっているような感じに
私は黙って次の言葉を待った。
.
‘‘ 一応、念の為に玄関のチェーンは
かけておいて”
「…チェーンをするの？」
‘‘ なんだか、ほら…昨夜から変なことばっか
あるから、心配症の俺としては用心して
欲しい…ってだけだから”
明るい声で笑いながら話してくれるけど
話せば話すほどに
きっと、私に言えないことがあったんだ…って
そんな気持ちが心の中をいっぱいにする。
.
‘‘A？”
「え、あっ…うん、ちゃんとチェーンするね」
なるべく、翔ちゃんに
私の不安が伝わらないよう
必死に受け答えをした。
切れた携帯を見つめながら
翔ちゃんが困ったことにならないように
そんなことばかり考えてた。
.
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作者名：ミイ
| 作成日時：2014年1月18日 0時
