天使が住まう家 (ページ10)

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「ごめん、明日仕事で少し外に出なきゃいけなくなったんだ」

食事中、彼のスマホに着信があり席を外してから約30分。
ようやく戻ってきたかと思ったら、しょんぼりとした様子でそう呟いた。

最初に宣言した通り、ここに来てからずっと彼は家で仕事をしていて一度も外へは出なかった。
それが突然の外出。

たった1日なのに彼が居ないこの家を想像すると少し不安を覚えた。

「...フィリックス..さん」

初めてその名を口にすると、彼はただでさえ大きい目をこれでもかという程に見開いて驚いている様だったが、ニコリと嬉しそうに笑った。

「なぁに？A」

「ちゃんと戻ってくる？」

彼の手に恐る恐る触れるとそのまま抱き寄せられた。

「当たり前だよ！なるべく早く帰ってくるようにするからね。
あと僕のことは呼び捨てで大丈夫だよ」

「でも…」

「僕はオーストラリアの出身なんだ。
向こうでは韓国ほど上下関係に厳しくないんだ。
気にしないよ」

英語だって喋れるんだよなんて自慢気に話すフィリックスが少し可笑しくて自然と笑みが溢れた。
　

「A今笑った？」

「え？」

「いつものAも可愛いけど、笑ったAは世界一可愛いよ」

恋愛ドラマのような甘ったるいセリフを聞いて顔が暑くなるのを感じた。
それと同時に脳裏で誰かの声が過った。

-「Aの笑顔が1番可愛いよ」-

そんなこと今まで誰にも言われことないはずなのに何でこんなにも懐かしくなるのか今の私にはわからなかった。