天使が住まう家 (ページ3)

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心地の良い優しい声が聞こえる。
ぽかぽか暖かくて日だまりにいるみたい。

天国ってこんなに良いところなのかなんて呑気なこと考えているとゆらゆらと体が揺れる感覚が。
ゆっくりと瞼を開くと金髪の綺麗な男性がこちらを覗き込んでいた。

「おはよう、起こしちゃってごめんね。
あんまりよく眠ってるものだから心配になっちゃって。
体調は大丈夫？」

男性はにっこりと微笑みベッドに腰かける。
この優しそうな男性が悪い人にはとても見えないけど、理解不能なこの状況に思わずシーツを握りしめて後ずさった。

「･･･だれですか、あなた。
私なんでこんなところに」

「先に自己紹介をするべきだったね。
僕はフィリックス、昨日路地裏で凍死しかけてた君を拾ったんだ」

「拾った･･･？何のためにですか？
私はあのまま死にたかったんです。
お金が必要なら払いますので、もう放っておいてください」

矢継ぎ早にそう告げて、ベッドのそばに置いてあった鞄から財布を取り出そうと手を伸そうとすると、その手を掴まれた。

「お金なんていらないよ。
ただ君のことが心配だったんだ。
昨日は凄く体が冷えてたから何か温かい飲み物を用意するよ。
ココアなんてどうかな？」

彼は幼子を落ち着かせるかのように優しく語りかけてくる。
それが逆に我慢ならなかった。

「飲み物なんていりません･･･！
もう帰ります！」

手を振りほどいてベッドから立ち上がろうとすると、それを阻止するかのように引っ張られ体を引き寄せられた。
まるで後ろから抱きしめられているかのような体勢に驚いて離れようとしたけど彼はそれを許さなかった。

「帰るのはだめ。
この家から勝手に出ることは許さない」

耳元でそう囁く声は今までの優しい声色とは違い少し冷たかった。