天使が住まう家 (ページ13)

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どうにも彼はフィリックスの知り合いのようなので果物ナイフを片付けようとしていると、傍に落としていたスマホの着信音が鳴り響いた。

驚いてスマホを手に取るとそこには待ち望んでいた彼の名前が表示されている。
慌てて電話に出ると今までに聞いたことのない程に焦った様子で名前を呼ばれた。

「A!?何かあった？
ごめんね電話すぐに出れなくて…！」

「フィリックス…？」

ようやくその声が聞けたことで安心したのか、ぽろぽろと涙が溢れ出した。

「A泣いてるの？
すぐに戻るから待ってて！」

電話口からも音漏れするほど大きな声でフィリックスが叫ぶと傍にいたチャンビンがハッとしたように私の手からスマホを奪い、スピーカーに切り替えた。

「ヨンボガ俺だチャンビンだ！」

チャンビンが焦ったように大声で叫んだ。

「え…チャンビニヒョン…？なんでうちに？」

さっきまでの緊迫した雰囲気が少し緩みフィリックスは不思議そうにしている。

チャンビンが本当にフィリックスの知り合いだったことを確認出来て私自身も少しホッとした。
　

「悪い…海外から帰ってきたばかりでお前の家の方が近かったから少し休ませてもらおうと思って寄ったんだよ
そしたら知らない女の子がいたから敵かと思って…その…」

チャンビンはバツが悪そうにもごもごと言い淀んだ。

「まさかAになにかしたんじゃないよね？」

そう問いかけたフィリックスの声は聞いたこともないくらい低く冷たかった。
私まで背筋が凍るようだったけど、尋ねられた本人も同じことを思ったのかしどろもどろになりながら弁解の言葉を次々と口にした。

「いや、あの…ちょっと怖がらせちゃったけど、その…怪我とかはないし…だから…」

ハッキリしない様子のチャンビンにフィリックスはため息をついた。

「ヒョン今日の仕事勿論代わってくれますよね？」

「え"…俺今日長期任務から帰ったばかりで…」

「代わってくれるよね、ヒョン」

「はい…」

有無を言わせぬフィリックスの態度にチャンビンは力なく頷いた。

「フィリックスかえってくるの？」

「うん、すぐ帰るよ」

その声は先ほどは違って私がよく知るいつもの優しいフィリックスの声だった。