天使が住まう家 (ページ12)

今日:11 hit、昨日:8 hit、合計:15,889 hit

11 ページ12

迫りくる足音が聞こえるたびに心臓がドクドクと音をたて今にも破裂しそうだった。

電話が留守番電話に切り替わり慌ててもう一度掛けなおすが繋がらない。

リビングの扉が開かれ部屋に入ってくる音が聞こえた。
もうダメかもしれないと思い目を瞑ると男が口を開いた。

「お前なんでこの家にいる？
どうやって入ったんだ」

恐る恐る男を見上げると男は怪訝そうな表情でこちらを見つめていた。
右手には拳銃が握られている。

銃口がこちらを向いている訳ではなかったが初めて見るそれに絶望が押し寄せた。

貧弱な私が果物ナイフなんかで拳銃を持ったガタイのいいこの男に勝てるわけがない。
ナイフから手を放し両手で頭を抱え込んだ。

「...うたないで」

ようやく出た声は情けないくらい小さかった。
ガタガタと震えながら縮こまっていると片手を強引に引っ張られ顔を覗き込まれた。

「お前もしかしてヨンボギが言ってたAか？」

ヨンボギというのが誰を指すのかはわからなかったが、自分の名前だったので小さく頷くと男は拳銃を胸ポケットにしまい、私と視線を合わせるかのようにしゃがみこんだ。

「悪い、もう保護してきてるなんて思わなかったんだ。
俺はチャンビン、ヨンボギの同僚」

「もう･･･？」

私とフィリックスが出会ったのは偶然だったのに彼はもう保護してきてると言った。
それじゃあまるで初めから私を拾ってくることが決まっていたみたいだ。

疑問を抱きチャンビンと名乗った男を見つめると、彼はしまったとでも言うように顔をしかめた。

「い、いや…気にしないで。
大したことじゃないし」

さっきまでの鋭い印象が嘘かのうようにチャンビンはへらへらと笑いながら言った。