天使が住まう家 (ページ11)

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次の日の朝。
私が目覚めるよりもずっと早くにフィリックスは出て行ったようだった。

隣に彼がいない事に少しの寂しさを覚えつつも寝室を出てリビングに向かうと机に美味しそうな目玉焼きやトーストなど朝食が用意されていた。

その横には可愛らしいピンク色のメモ用紙が置いてあり、「温めて食べてね。すぐに帰るよ」とメッセージが残されていた。

フィリックスの気遣いに心がじんわりと温かくなった気がした。

なんとなくつけてみたテレビを横目に朝食を食べていると、ガチャっと玄関のドアが解錠される音が聞こえてきた。

いくら早く帰るといったって今はまだ朝の9時。
なにか忘れ物でもしたのかと思いリビングを出るとそこにはフィリックスとは似ても似つかないガタイのいい三白眼の男が立っていた。

突然の知らない男の訪問に驚き慌ててリビングに戻り、何か身を護る物をと思いキッチンから果物ナイフを取り出した。

今まで知らない人がこの家に来たことなんてなかったのに。
震える手で真新しいスマホを操作しフィリックスへと電話をかける。

お願い･･･電話に出て･･･！

キッチンの隅に蹲り祈るもスマホから聞こえるのは彼の優しい声ではなく無機質なコール音だけだった。