35、夕刻の山にて ページ46
乱said
もうすぐ日が暮れ始めるだろう時間になった。
兄弟達の部屋からこっそり抜け出して
あの女の姿を探す。
暫くして森と化した中庭の奥に
ある大樹の側に行くと
女によく似た、青年を見つけた。
乱「ねぇ」
声をかけても動く様子はなかった。
乱「ねえってばっ!!」
もう一度声を掛ければ、すぐに振り返った。
嗚呼、なんて美しくて綺麗なんだろう――
不意にそう思ってしまった。
青年は表情が薄くて感情はよく読み取れなかった。
「...貴方は?」
乱「乱藤四郎。あんたは?」
鎮「鎮と言います。母上...月喰様の血の繋がってない息子です。」
血の繋がってない、というところで
彼の瞳が揺らいだ気がした。
酷く、悲しそうに。
乱「...ふうん。...ねえ、あの人って、どんな人?」
凛とした声と溢れでる気品、しかしまだ実ったばかりのような瑞々しく美しくしい乙女。
山を流れる川のような人。
僕からみたらそう感じた。
鎮「...あの人は優しい。そして強い。母親って、あの人のようなことを言うんでしょうね。」
乱「母親?」
鎮「まあ、親代わりですから。でも何より...脆い。」
乱「脆い...?」
あの人からはそんな感じは一切しなかった。
僕はあの人は無敵で、何からでも救ってくれる神様だと思った。
鎮「美しい者は何よりも脆いんです。その見た目故に虐げられ、貪られ、身を隠そうにも逃げきれず、まるで水面に映る月のように頼りない。」
悲しそうに語るその言葉は
まるでそれが決まっていることのようだった。
僕たち刀剣は
皆美しく、何よりも脆い。
胸が苦しい。
思い出したくない。
顔を少ししかめた。
鎮「あの人は...幸せを叶える分だけ自分の幸せを消してるんじゃないのかなって思うくらいに。」
そしていとおしそうに目の前の青年は大きな樹を撫でた。
鎮「結局は置いていかれる身ですから。」
そういう言葉の端に、後悔の色が浮かんでいた。
乱「ねえ...あの...」
鎮「なんですか?」
乱「貴方のその...母上は僕たちの味方?」
安心できる確証が欲しかった。
青年は安心させるように微笑んで僕の頭を撫でた。
鎮「味方になって守るために来たんです。だから、傷ついたり、いなくなったりしないでくださいね。」
その言い方が
今も目を覚まさないあの兄弟にそっくりで
たまらず涙が零れた。
滴が夕日にあたって金色に光って
草の葉に跳ねて
茜の森に吸い込まれて消えた。
- 金 運: ★☆☆☆☆
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白い雪(プロフ) - * *花菜**さん» ありがとー!頑張る笑 (2018年3月29日 9時) (
レス) id: b06dc51979 (このIDを非表示/違反報告)
* *花菜**(プロフ) - ひさしぶりに読んだよ！応援してます(*´ω｀*) (2018年3月29日 8時) (レス) id: 10d63d3fb8 (このIDを非表示/違反報告)
白い玉(プロフ) - 千本桜さん» ありがとうございます!!一気に更新を公開するので待っててください! (2018年2月7日 15時) (レス) id: b06dc51979 (このIDを非表示/違反報告)
千本桜 - 続き楽しみにしてます！更新、頑張ってくださいね！応援してます！ (2018年2月7日 5時) (レス) id: e733f5adaf (このIDを非表示/違反報告)
白い玉(プロフ) - 優香さん» ありがとうございます!!更新一気にするつもりなので楽しみにしててください!! (2018年1月26日 13時) (レス) id: b06dc51979 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白い玉 | 作成日時：2017年11月5日 19時
