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9th ページ10

兄の死を目の当たりにし、シモーネは唖然としていた。
そしてよみがえる、一抹の記憶。
刹那、彼女は叫んでいた。

「あああああああああああああああああああああああああああああ!」

悲しみなのか、怒りなのかはわからない。すべてが混じった咆哮だった。
時間さえ、動きを止めていた。
何もかもが色を無くし、もう何も見えなかった。

くだらない差別のせいで、彼女は一瞬にして家族を失った。

もう、死んでしまおうか――。
彼女はそう考え、アーロンの近くにあった剣をつかんだ。
これで楽になれる。これで皆と会える。
これで――……。

“シモーネ”

「……誰?」
その声に、彼女の決意が揺れる。

“行こう……”

聞き覚えのある声だった。剣を持つ手に力が入らなくなり、剣は床へと落ちた。
「……アル……」
つきていたと思われていた涙が、再びこぼれ落ちる。
救世主、というべき存在。アルの声が、シモーネを呼び戻す。
「どこにいるの……アル……」
よろよろと立ち上がり、焦点の定まらない目で歩き出す。

“大丈夫だよ”
“僕が、いるから”

……うん、そうだね……。
血のこべりついた服のまま、戦場を歩く。裸足で、砂利を歩く。
痛みさえ、忘れていた。
彼女が見据えていたのは、あの場所だった。


「シモーネ!」
アルは、叫んだ。滝の前で、驚愕に瞳を揺らしながら。
「……よか、った……」
そこで彼女は、力尽きた。彼女の体には、いくつもの傷があった。血がそこかしこから流れている。

こうして、カタトーレ一家は滅びた。

一人生き残ったその少年は、決意する。
後世に語り継ぐこと。そして、――封印されようとしている精霊を守ること。

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紅映(プロフ) - あの、プレリスに載せてもいいですか? (2011年10月5日 19時) (レス) id: 3de99fac11 (このIDを非表示/違反報告)
フリージア(プロフ) - >美稀 オリジナル…です。 (2011年6月6日 23時) (レス) id: 4317b84763 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フリージア | 作成日時:2011年3月28日 12時

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