あ、ども。妹です。 其の弐

太宰治、即ち兄さんの誕生日　弐 ページ25

1度深呼吸をする。兄さんは不審がっているが気にしない。

決心が付いたところで箱を渡した。

「お、お誕生日、おめでとう」

目を合わせられず、そっぽを向いてしまった。

「え、光。此れを私にくれるのかい?」

声が喉に詰まり、うんと頷いた。

「有難う」

目の端で兄さんの笑顔を見た。

マフィアで培った恐ろしさなど微塵も無い。唯々、久しぶりに素で笑ってくれた。

この事は僕にとって、とても嬉しい事であったのだ。

「いえいえ。お礼を云われるほどでもないから」

恥ずかしくなり、頬をかいた。

「中を見ていいかい?」

「うん。どうぞ」

楽しそうにリボンを解き、いそいそと蓋を開けた。

「おぉ。素敵じゃないか」

今回、誕生日のプレゼントとして選んだのは瑠璃色のリボンタイだ。

「大事にするよ」

満面の笑みで礼を云われた。面と向かって云われるとやっぱり恥ずかしい。

「ひか、今日の予定は?」

「無い。というか、あだ名止めて」

そんなことを云ったが本当は嬉しい。

「これから一寸出かけよう」

「別に。いいけど」

「よし。ならば行こう!ほら珈琲飲んで!」

無理やり急いで飲ませれる。うぅ、砂糖入れればよかったな。苦いや。

「勘定は私がしておくから」

「いや、僕がやる」

「今回位、私にやらせ給え!」

先刻の笑顔で云われたらたまったものじゃない。身内でも驚く。珍しすぎて。

仕方なく、外に出て兄さんを待つ。

今から、そして此れから、いい事がおきそうだ。

空に笑いかけているところを見られ恥じるなか、幼い時のように肩を並べて歩き出した。




――太宰さんハッピーバースデー!――――――――――――――――――――――――

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