赤雪紙鶴 前 ページ9
私が賀茂家の門下に加入して一年経つか経たないかくらいの話なので、多分七歳か八歳辺りの頃だったと思う。
授業が終わった自習時間、郊外の長閑な河原に座り込み、教本と筆記帳を両手に持ち復習に勤しむ私の腕に、ふわふわしたものが飛びついてきた。
鋭く伸びた赤黒い角が視界に映る。
妖怪、と恐怖で強張る私の体。
わん、と興奮気味に鳴く眼前の生き物。
妖ではなく真っ白な毛の可愛い犬だと気づいて、硬直は一瞬で済む。
撫でるついでに角の生え際に触れると本物ではなく飾り物だということも判明し、私は勉強道具を巾着に仕舞ってから犬と向かい合った。
「迷子なのかな?」
毛先部分が赤と黒の色をした、大筆の穂に似た尻尾が、振り乱す元気を途端に失い垂れ下がる。
悲しげに澄んだ鳴き声を上げながら、つぶらな瞳で此方を見つめてくる。
コロコロとした健康的な体を覆う毛の状態は非常に良好で、首輪の代わりらしき緋色の首巻きは素材からして高級品。
この子は凄く大事にされている犬なんだ、恐らく飼い主の人も心配しているだろう。
「ちょっと待ってね」
私は懐から一枚、形代を取り出す。
「最近覚えた術なんだけど……あ、食べちゃ駄目だよ! これは道標紙人形って言ってね、探している人や物の所まで案内してくれるの」
咥えようとするのを阻止してから改めて手の平に乗せた紙人形を差し出せば、お利口にポンとお手をする。
肉球型が印影のように固着すると、紙人形の頭部が矢印へと変幻した。
意思が注がれ術が作用した証拠だ。
私は荷物を持って立ち上がる。
「おいで。飼い主さん、きっと見つかるよ」
私達は紙人形が指し示す方角に従い歩き出した。
そうして導かれた先は都の町中、碁盤目状の枠組みの中に建つ豪華な邸宅が並んだ区域だった。
隣をとことこ歩く犬を見遣れば、犬は呑気な表情を返してくれる。
やはり貴族に飼われている犬なのかなと推測し、一層高まった緊張で全身をむず痒くさせながら、曲がり角に差し掛かった。
ドン、と強く衝突した衝撃に、子供の体は耐えられない。
尻餅をつく私に、まるで自分が踏まれたかのような声を上げて寄り添う犬だが……その健気な意識は、私とぶつかった人物の方に向けられてしまう。
「此処に居たか」
濡羽色の髪を持つ青年の声は、低いけれど微かな柔らかさがあった。
- 金 運: ★☆☆☆☆
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minede(プロフ) - イズモさん» ご返信ありがとうございます。m(_ _)m いや、無理しないでください。(>人<;) 無理だったら無理で大丈夫ですよ(T-T) (2022年2月21日 18時) (レス) id: ade13d59b5 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - minedeさん» 不知火や頼光の話も考えてみたいですが、ちょっと難しいかもしれないです……でも挑戦はしてみます! 遅くなるかもしれませんが、お待ち頂ければ幸いですm(_ _)m (2022年2月21日 0時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - minedeさん» 読んでくださってありがとうございます、そしてリクエストも沢山ありがとうございます! バレンタインはこの前イベントやってましたね〜 ネタが思い付きそうなので頑張ります! (続) (2022年2月21日 0時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
minede(プロフ) - 1主人公の設定で載ってた不知火様と主人公との女子会。縁結びの神様とご一緒に。2バレンタインのお話。オロチ様を頑張って避けてチョコ作る主人公と仲のいい女性(作者にお任せ)3源頼光様と合同任務 です。可能でしたらよろしくお願い致します。 (2022年2月20日 15時) (レス) id: ade13d59b5 (このIDを非表示/違反報告)
minede(プロフ) - 久しぶりに占ツク開いたら更新されててビックリしました!!主人公の誠実さはカッコいいです。オロチ様の神の本性もかっこよすぎて尊いです。リクエスト何件かありますが大丈夫でしょうか? (2022年2月20日 15時) (レス) @page20 id: ade13d59b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2020年10月23日 0時