【陰陽師】邪神と陰陽師の異形な絆【短編集】

追月神の焼き餅 伍 ページ25

ある日、兎は弱り果てた老人と出会い、食べ物を恵んで欲しいと頼まれた。


心優しい兎は老人の為に食べ物を一生懸命探し回った。


しかし兎には人間が食べられるような果物や魚を採る力がなく、結局何も持ってくることが出来なかった。


兎は役に立てないことを悲しみ「どうぞ私を食べてください」と言って火の中に飛び込んだ。


自身を食糧として老人に捧げたのだ。


これを見た老人は直ぐに「元の姿」に戻った。


なんと老人の正体は、兎の行いを試そうとした天の神様。


兎の献身に感動した神様は、兎を皆の手本とする為に月へ昇らせた。


月で蘇った兎は、神様がお腹を空かせないように、餅を搗いているのだそうだ。



物語を終えてから、隔絶が埋まることは決して有り得ない遥か遠い距離に指先を伸ばす。


どれだけ一途な想いを寄せても、月は私に何もしてはくれない。


「神は……私の働きには、報いてくれないのかしら……」


私の積年の努力に神様のお墨付きを貰えることが出来たならと、夢想することがある。


想い描いても、ただ揺蕩うばかりで、無意味なのに。



「食べ物を取ってきたり、飲み水を運んできたり、困っている誰かの為に大変な苦労をするのは凄いことです」


また女の子にはっとさせられる。


どうやら餅は食べ終わったらしい、その子は続ける。


「この国は自然が豊かで、災害が多いです。災害が起きたら皆で力を合わせて乗り越えます。でも人間には限界があるから、自然の力に勝つことは出来ません。そんな時は、神様が私達を守ってくださいます」


自然は人を育みも殺しもするが、例え人が全て絶え国が滅んでも、びくともせず其処に在り続けるだろう。


そして自然は人のように神に傅かないし諂わない。


神代の頃に日の神が「我らが統治するべきだ」と仰った程に此の国は。


獣も魚も虫も木も草も花も種も土も水も、豊かで騒がしい。


そんな葦原に生きる儚い人の子が、私を真剣に見つめている。


どれだけ憧れ真似たとしても、永遠に神にはなれない私そのものを、認めようとしている。



「私は、人間の祈りや願いに全身全霊で応えてくださる貴女を、間違っているとは思わないです！」



希うような眼差しが私には切なくて、眉尻も口角も緩んでしまう。



「……もしも、私は妖怪だと人々に白状したら、今まで通り神として祀り崇められると思う？」

追月神の焼き餅 陸→←追月神の焼き餅 肆

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

ラッキー方角

西 - この方角に福があるはずです

おみくじ

おみくじ結果は「末凶」でした！

ラッキー御魂

陰摩羅鬼

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す