追月神の焼き餅 弍 ページ22
チヤホヤされるのは嘸かし気持ちの良いことなのでしょう、だから常に寛大で温和な神性を保って胸を張れるのだ。
「あっ……あの……」
黙り込んだ私に女の子は狼狽えている。
今度は私が泣きそうな顔をしているのを感じ取り、それをどうにかしたいらしい。
「あのっ」
息を吸い込んで懸命に声を張り上げた。
「貴女が追月神様ですか!?」
鈴払いを思わせる声が響いて、頭の中が朧に霞むけど、威厳を立て直すべく、私は俊敏に堂々と構える。
「そっ、そうだっ」
謦咳して喉の調子を整えたはずだが吃る声。
覇気がなくて締まらないにも拘わらず、女の子が私を見る目は怯懦なものから一転して、憧憬に満ちていた。
そういう視線を向けられるのは嫌いじゃないから、私の気分は確実に高揚していった……けど。
「神官様が、貴女のことも教えてくださいました」
農業が盛んなこの国にとって五穀豊穣の神は有り難い存在であり、稲荷の社はこれからも益々増えていくことだろう。
しかし、誠実な心のみを供えることが出来なければ、無条件に人間を愛する神様であっても、神社を去り、我々の祈りに耳を澄ませることはなくなってしまう。
残念なことに、民が祈り方を誤ったが故に空いてしまった社の一つを、我が物としている妖怪がいるそうだ。
神を名乗るその妖怪は、人間が飢餓に苦しむと百里離れた山奥から鹿や兎を捕らえ持ち帰り与え、人間が干魃に苦しむと千里離れた川へ行き井戸が満ちるまで何度も水を汲む。
本物の神様であれば、飢えや渇きに正しく慈善を施し、皆が幸せに暮らせるならそれで良いと優しく微笑むだろう。
一方で感謝されることを目的とし崇め祀られ優越感に浸る「あれ」は、例え結果的に人間達を救っているのだとしても、私欲に塗れた偽物だ。
「……その神官様は、まるで悪いことみたいに仰っていたけど、でも私」
女の子の奥床しい笑顔が、私の心を真っ黒に歪ませる。
「貴女のように人間を助けてくれる妖怪がいることが、凄く嬉しくて」
私は砕けそうになるくらい奥歯を噛んでから、女の子の言葉を遮った。
「その口振りだと。貴女、私が本物の神ではないと確信しているのね」
清廉な神の熱烈な信者である神官様とやらが仰る通り、私は神のように振る舞い神のような評判を得ている小妖怪だ。
人々が信じている限り私は神でいられるが、どんなに苦労をして祈願に応えても、真実は無慈悲に私を呵責する。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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西 - この方角に福があるはずです
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした!
ラッキー御魂
陰摩羅鬼
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minede(プロフ) - イズモさん» ご返信ありがとうございます。m(_ _)m いや、無理しないでください。(>人<;) 無理だったら無理で大丈夫ですよ(T-T) (2022年2月21日 18時) (レス) id: ade13d59b5 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - minedeさん» 不知火や頼光の話も考えてみたいですが、ちょっと難しいかもしれないです……でも挑戦はしてみます! 遅くなるかもしれませんが、お待ち頂ければ幸いですm(_ _)m (2022年2月21日 0時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - minedeさん» 読んでくださってありがとうございます、そしてリクエストも沢山ありがとうございます! バレンタインはこの前イベントやってましたね〜 ネタが思い付きそうなので頑張ります! (続) (2022年2月21日 0時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
minede(プロフ) - 1主人公の設定で載ってた不知火様と主人公との女子会。縁結びの神様とご一緒に。2バレンタインのお話。オロチ様を頑張って避けてチョコ作る主人公と仲のいい女性(作者にお任せ)3源頼光様と合同任務 です。可能でしたらよろしくお願い致します。 (2022年2月20日 15時) (レス) id: ade13d59b5 (このIDを非表示/違反報告)
minede(プロフ) - 久しぶりに占ツク開いたら更新されててビックリしました!!主人公の誠実さはカッコいいです。オロチ様の神の本性もかっこよすぎて尊いです。リクエスト何件かありますが大丈夫でしょうか? (2022年2月20日 15時) (レス) @page20 id: ade13d59b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2020年10月23日 0時