月見 ページ1
中秋の名月、夜半の月、オロチと縁側で月見をしながら私は思う。
今宵のように耀う夜は、月の都の姫君が登場する昔話の光景に、きっと似ているのだろうと。
ある罪をお作りになった姫は罰として下賤なる地上へと降ろされ、償いの刑期が満了した十五夜に月の使者達が迎えに参り、故郷の天上へと昇って行く。
「下賤」なる地上……流刑地とされる程、天上界にとって地上界とは、酷く醜く穢れた場所に違いない。
さて、肝心なのに詳細の語られていない姫の罪とは、月の世に生きる者でありながら人の世へ憧れを抱いたこと、という説がある。
その一説を思い出した頃合いで私は隣を瞥見した。
オロチも姫と同様に現世へ興味を持ったことによって罰された者。
理不尽と呼べる境遇が似通っているような、と考えて私は思い直す。
オロチに下された天罰は、赦しと帰還が約束された姫と違って死罪同然のものであった。
見つめられていることにふと気づいたオロチが私を見遣る。
何か言いたげなのを察して小首を傾げてみせたのを皮切りに私は尋ねる。
「もしも、高天原へ帰れるのだとしたら、貴方は、帰りますか?」
「帰らん」
僅かに瞳を濁したオロチがそう即答し、半紙が敷かれた三方に積まれた月見団子へ手を伸ばし、自身の口元へ運んだ。
実はその団子、高天原の使者である荒様から頂いた物なのだが……それはこの話の本筋から離れてしまうので話題にするのは良しではないだろう。
「……理由を、お聞かせください」
愚かな問い掛けだと我ながら思った。
でも団子を嚥下した後に蛇神は微笑んで答えてくれた。
「始まりと終わりがあるお前達が愛おしいからだ。神はそうではないからな」
人世は、神世と違って何もかもが清らかではなく、寧ろ汚れてしまっている。
だがそれ以上の輝きや彩りが満ち、溢れんばかりの豊かな生命が掛け替えの無い想いを抱えながら、散って、絶えて。
生老病死、愛別離苦、怨憎会苦、五蘊盛苦、愚かで憐れ、しかしそれら全てを引っ括めて可愛らしい生き物が人間だと、蛇神は宣う。
名残惜しみながら「帰りたくない」と嘆き悲しみ泣いていた月の姫は、天の羽衣により物思いを綺麗に忘れてしまったそうだ。
記憶が浄化される直前まで、姫もオロチのように、現世を肯定してくれていたのだろうか。
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minede(プロフ) - イズモさん» ご返信ありがとうございます。m(_ _)m いや、無理しないでください。(>人<;) 無理だったら無理で大丈夫ですよ(T-T) (2022年2月21日 18時) (レス) id: ade13d59b5 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - minedeさん» 不知火や頼光の話も考えてみたいですが、ちょっと難しいかもしれないです……でも挑戦はしてみます! 遅くなるかもしれませんが、お待ち頂ければ幸いですm(_ _)m (2022年2月21日 0時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - minedeさん» 読んでくださってありがとうございます、そしてリクエストも沢山ありがとうございます! バレンタインはこの前イベントやってましたね〜 ネタが思い付きそうなので頑張ります! (続) (2022年2月21日 0時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
minede(プロフ) - 1主人公の設定で載ってた不知火様と主人公との女子会。縁結びの神様とご一緒に。2バレンタインのお話。オロチ様を頑張って避けてチョコ作る主人公と仲のいい女性(作者にお任せ)3源頼光様と合同任務 です。可能でしたらよろしくお願い致します。 (2022年2月20日 15時) (レス) id: ade13d59b5 (このIDを非表示/違反報告)
minede(プロフ) - 久しぶりに占ツク開いたら更新されててビックリしました!!主人公の誠実さはカッコいいです。オロチ様の神の本性もかっこよすぎて尊いです。リクエスト何件かありますが大丈夫でしょうか? (2022年2月20日 15時) (レス) @page20 id: ade13d59b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2020年10月23日 0時