「炎上の大晦日」(柒) ページ7
再び場面は変わって、業火に包まれた都では……。
言うまでもなく、都全体が阿鼻叫喚となっていた。
人々は着の身着のまま逃げ惑う。
そんな危機的状況でも都の陰陽師達は、人々を出口まで誘導し、結界術を用いて降りかかってくる火の粉や倒壊した建物から人々を守るなど、冷静な対応を取っていた。
晴明達もまた、大混乱に巻き込まれ、咄嗟に動けず呆然と立ち尽くしていた。
「博雅様! 晴明様!」
「お前達、来ていたのか!」
白狼の声に反応した博雅が叫んだ。
混乱の渦の隙間から、白狼、蛍草、そして妖刀姫が、晴明達の元へ駆けて来た。
修行漬けの日々を送る彼女達であるが、流石の年末年始は根を詰めるのを止め、都で大晦日を楽しんでいたのだろう。
束の間の休息は、原因不明の出火によって、一瞬にして絶望へと変わってしまった。
「この炎。強い妖気を感じる。晴明様、一体何が起こっているの?」
周囲に意識を集中させながら妖刀姫が尋ねたが、晴明は首を横に振ることしか出来ない。
「私にも皆目見当が付かない。だが、この妖気は……」
以前にも感じたことがある。
その気の正体がはっきりとしない歯痒さから、晴明は顔をしかめた。
「うう、熱い……」
炎の熱にやられたらしい蛍草が、大きなタンポポの茎を握り締めながらよろめいている。
「大丈夫ですか? 蛍草」
心配そうに肩を支えてくれた白狼に、蛍草は弱々しい笑顔を作った。
燃え広がる炎の勢いが、どんどん増していく。
「どうして、こんなことに」
神楽が青ざめながら、火の海を見つめた。
「小白達も早く逃げた方が!」
「晴明様」
慌てる小白の言葉を遮ったのは、あの女性。
炎の中を無傷で歩き、こちらへ向かって来る。
同行していたAの行方は?
この状況で何故涼しい顔をしていられるのか?
何から問いただせば良いのか分からず押し黙る晴明を見て、女性は小馬鹿にするようにほくそ笑む。
「稀代の陰陽師と謳われているのにも関わらず、こんな子供騙しの変装にまだ気がつかないのか? 晴明」
広げた女性の手の平の上で揺れる炎が、怪しげな仮面に変わる。
仮面を顔に付けた女性の服装は、晴明がよく知る、煌びやかな装飾をあしらった紫に近い紺の着物へと変幻した。
晴明は目を見開く。
「玉藻前……!!」
玉藻前が正体を現したことで、肌を刺すような悪しき妖気が漂う。
妖気を察知したらしい都の陰陽師達も、その場に集結した。
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イズモ(プロフ) - みつきさん» ふわっとした説明ですみませんが、そんな感じです! (2023年4月6日 12時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - みつきさん» 容姿の詳細は読者様へお任せしていますが一応自分の中では……前髪ぱっつんのロングヘアで髪色はピンクラベージュっぽい色味の暗髪、瞳は桜のような色をしていて色素が薄めなのでフチが金色の瞳孔(黒)が見やすい……とイメージしています。服装は狩衣です。 (2023年4月6日 12時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
みつき - 主人公の容姿ですがイズモさんは、髪の色や服装瞳の色、髪型などはどのように考えていますか?主人公についてです!できれば教えてください! (2023年4月5日 21時) (レス) id: 5d80019c07 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - みつきさん» コメントありがとうございます! 主人公は式神ではないのでレア度は特に決めていません。晴明神楽博雅八百比丘尼と同じく陰陽師枠のつもりで妄想しました〜。 (2023年4月5日 12時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
みつき - どのくらいだと思いますか?SRくらいですか? (2023年4月5日 8時) (レス) id: 5d80019c07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2018年9月12日 22時