「賀茂家の陰陽秘術」(柒) ページ22
二人の頭を撫でようとした玉藻前の腕が、ぱたりと降ろされる。
「俺は父親失格だ……」
完全に正気を取り戻した玉藻前は、自分の行いの醜さに気がつき頭を垂れた。
「素性も知らんたった一人の陰陽師への報復の為に……大勢を犠牲にした……」
そのような愚か者が一丁前に家族の団欒を求める資格など無い、玉藻前は心底からそう思った。
「……確かに貴方の行いは、永遠に許されるものではありません」
千代は玉藻前の両手を取り、しっかりと握ってから続ける。
「ですが、私達は貴方の家族。貴方だけでは背負い切れない罪と罰も、私達なら共に背負って生きて行くことが出来ます」
双子が玉藻前と千代の間に割り込んで、両親が作る腕の輪の中にすっぽり収まり、無邪気に笑った。
家族愛という慈しみに包まれた玉藻前の視界が熱く滲む。
「これからはずっと一緒ですよ、玉藻前。勿論、羽衣と愛花も……」
玉藻前の悲劇は浮かばれた。
長年孤独であった父親の中に募った憎しみは、愛する妻子との再会によって、一瞬で消え去った。
この涙は雨となり、地上に降り注ぎ、都の業火と妖も浄化されることだろう。
良かった……。
私の陰陽師としての人生は、これでお終い……。
どこか遠い所から玉藻前一家を見守っていたAは、穏やかに近づく死を受け入れるべく静かに瞼を閉じた。
しかし。
誰かがそうすることを阻んだ。
Aの眼界に星空が戻って来た。
荒が、永遠の眠りに落ちようとしていたAを抱き起こし、寄り縋っていた。
僅かに目が冴えたAであったが、睡魔は容赦無く再び迫り来る。
荒は何も言わずにAを抱き締めていた。
別に荒に頼まれた訳では無いがAは、眠気を堪えながら、自分が何をしたのかの説明を始めた。
言わなければと思ったからだ。
Aは賀茂家に代々伝わる秘術を用い、亡くなった玉藻前の家族、妻と双子、三つの魂を蘇らせた。
人間でありながら神と同等の力を得て、死んだ魂を現世に呼び戻す……それは陰陽の理に背くという御法度。
その代償として失われるのは、術者の命。
だからAは、もう直ぐ荒と「さよなら」をしなくてはならない。
「……何故だ」
ようやく声を出した荒だが、その声音はとても繊弱なものだった。
何故、とは、何か。
この行いに対する理由のことだろうか、とAは受け取った。
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イズモ(プロフ) - みつきさん» ふわっとした説明ですみませんが、そんな感じです! (2023年4月6日 12時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - みつきさん» 容姿の詳細は読者様へお任せしていますが一応自分の中では……前髪ぱっつんのロングヘアで髪色はピンクラベージュっぽい色味の暗髪、瞳は桜のような色をしていて色素が薄めなのでフチが金色の瞳孔(黒)が見やすい……とイメージしています。服装は狩衣です。 (2023年4月6日 12時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
みつき - 主人公の容姿ですがイズモさんは、髪の色や服装瞳の色、髪型などはどのように考えていますか?主人公についてです!できれば教えてください! (2023年4月5日 21時) (レス) id: 5d80019c07 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - みつきさん» コメントありがとうございます! 主人公は式神ではないのでレア度は特に決めていません。晴明神楽博雅八百比丘尼と同じく陰陽師枠のつもりで妄想しました〜。 (2023年4月5日 12時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
みつき - どのくらいだと思いますか?SRくらいですか? (2023年4月5日 8時) (レス) id: 5d80019c07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2018年9月12日 22時