「元風神と稲荷神」(肆) ページ15
聞き分けのないAに、やや叱りつけるような声の調子で、御饌津は言った。
Aは一旦黙る。
御饌津は気を落ち着かせてから、優しく声を掛ける。
「事態が収束するまで、私達と安全な場所で待機していましょう」
そう言い聞かせられても、Aの心は既に決まっていた。
御饌津に向かって差し伸べたAの手に、紙人形が一体出現する。
「守られるのは性に合いません。私は常に守る側でしたから」
紙人形が御饌津の顔前に飛び掛かると、全身細かく散り散りとなり、まるで紙吹雪のように御饌津の視界を舞った。
目くらましに虚を突かれた御饌津は袖で顔を覆う。
その横を足早に抜け、Aは茂みの奥へと消えて行く。
顔面蒼白となる御饌津。
「駄目よ、待って! 待ちなさいA!」
「止めるな。御饌津」
後を追おうと駆け出し掛けた御饌津を引き止めたのは、一目連の冷静な声。
驚く御饌津を見つめながら、一目連は返された羽織を纏う。
「Aの言う秘術がどのようなものかは分からんが……確実な手立てがあると言うならば、信じて任せるのが得策だと思うぞ」
御饌津は震える両手を握り締める。
「そうかもしれませんが!」
「そなたも人々の幸福を願う神であれば、Aの、人々を守りたいという気持ちを、理解してやれるはずだろう?」
一目連は包帯の巻かれた自身の右目に手を当てた。
この傷は、風神でありながら水の流れを変えるという、禁断の手段を行った代償として受けた罰。
片目を犠牲に洪水から村を守ったことを示す印。
「それに……ここはもう安全な場所とは呼べん」
一目連の温和な瞳が途端に鋭くなる。
辺り一帯は、玉藻前の妖気に触発され凶暴化した小妖の群れに取り囲まれてしまっていた。
「我が食い止めよう。さあ行くのだ」
一目連が前に出ると、狐が鼻先で御饌津の肩を突いた。
乗れ。
そう言っているようだ。
決心を固めた御饌津は狐に跨る。
「ご無事を祈ります!」
御饌津は狐を走らせた。
狐は颯爽と悪鬼の群れを飛び越え駆けて行く。
その後を追おうとする者は、一目連が放った風符に足止めされた。
御饌津を乗せた狐が、山を下りるAに追いついた。
連れ戻しに来たのかとAは身構えたが、拍子抜けすることとなる。
「乗って、A!」
今度は御饌津が、Aに手を差し伸べていた。
「共に都へ参りましょう!」
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口調が合ってるか不安……。
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イズモ(プロフ) - みつきさん» ふわっとした説明ですみませんが、そんな感じです! (2023年4月6日 12時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - みつきさん» 容姿の詳細は読者様へお任せしていますが一応自分の中では……前髪ぱっつんのロングヘアで髪色はピンクラベージュっぽい色味の暗髪、瞳は桜のような色をしていて色素が薄めなのでフチが金色の瞳孔(黒)が見やすい……とイメージしています。服装は狩衣です。 (2023年4月6日 12時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
みつき - 主人公の容姿ですがイズモさんは、髪の色や服装瞳の色、髪型などはどのように考えていますか?主人公についてです!できれば教えてください! (2023年4月5日 21時) (レス) id: 5d80019c07 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - みつきさん» コメントありがとうございます! 主人公は式神ではないのでレア度は特に決めていません。晴明神楽博雅八百比丘尼と同じく陰陽師枠のつもりで妄想しました〜。 (2023年4月5日 12時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
みつき - どのくらいだと思いますか?SRくらいですか? (2023年4月5日 8時) (レス) id: 5d80019c07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2018年9月12日 22時