「荒海の神子」(拾参) ページ49
Aはゆっくりと頭を傾けて、荒の胸元に自身の額を押し当てた。
Aの体温が、荒の凍った心をいとも容易く溶かした。
息を吹き返すかのように自身の心臓がばくばくと熱く脈打ち出したのを、荒はしかと感じていた。
この鼓動は、Aにも伝わっているのだろうか。
「私で宜しければ側にいます。この命がある限り、ずっと荒の側にいますよ」
Aがそう囁くと、荒は切迫した表情で、Aに覆い被さるように前傾する。
荒から見てとても小さなその体をしっかりと両腕で包み、更に自分の方に引き寄せさせた。
「……私は、貴方が神様だから、貴方の望みに従っているのではありません……」
Aの声は震えていたけれども、荒の耳は一言も聞き逃さまいと、弱々しい声を必死で拾っていた。
「ちっぽけな人間なりに、貴方の孤独を埋めることが出来たらなって、本当にそう思っているから……私は……」
荒は隙間なくAを抱き締めた。
Aは強い力に応えようと、荒よりかは緩めにだが抱き締め返す。
今までで一番の幸福感に刺激され、荒の瞳が不鮮明な膜で覆われた。
永久に共にいられる訳では無い。
惜しいことに、荒の腕の中にあるこの美しい魂には、寿命というものが存在する。
いつか来たる永遠の別れ。
……せめて。
せめて、運命の道標を見ることの出来る自分が、Aの生涯が平穏無事であるように祈り、そして傍らで守り続けよう。
もしもAに不幸な運命が待ち受けていたとしたら、この身を削ってでも必ずその軌跡を変えてみせる。
そう、例え……運命の前では、誰もが無力だとしても。
荒は固く決意した。
それは、Aに心酔してしまっている自分の自我を保つ為でもあった。
----
荒(少年)をもう一度出したいという理由で考えた話です！
あと自分の中の荒観が大分強く出ちゃってるので何かもうすみませんって感じです……。
----
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イズモ(プロフ) - 茶々丸さん» わ〜ご愛読ありがとうございます！！…荒の声優さんに念を送ってもらいましょう！(平安京ラジオ) (2019年9月23日 18時) (
レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
茶々丸 - 一年経っても見させてもらってます！荒来てくれえぇぇ！大歓迎だぞぉぉお！ (2019年9月23日 10時) (レス) id: 65a910c7b3 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 横ごりらさん» ！！確かに！荒って何か…自分のこと好きじゃなさそうな気がするんですよね…伝記でもどっちかと言うと人間より自分を責めてる感があるように思えますし…どれも個人意見ですが(´-ω-`)こちらこそ、荒のこと語り合えて楽しかったです！ありがとうございました！ (2018年9月11日 21時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» ｢愚か者め！｣｢愚かな･･｣とかもよく言ってますが、｢愚か｣って、自分自身にも思っててよく使う言葉なのかな･･とも思いました>< いえ！とんでもないです！またイズモさんのお話を聞けてとっても嬉しいです！(^///^)お返事くださり有難うございました！ (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 私も想像になってしまいますが、もしも叱ってくれているのだとしたら本当に優しいですよね･･･常に無表情で厳しい言動の裏では、本当は自分以外の存在をいつも気にかけてくれているのかなと思えます(；_；)いっそ本心から見下して関わらなければいいのに･･(；_；) (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：イズモ | 作成日時：2018年6月30日 20時
