「濃紅と濃黄の中で」(玖) ページ36
ゆっくりと唇同士が離れる。
荒の愛おしそうな瞳が、限りなく至近距離で見つめてくる。
耐え切れずAは目を逸らす。
膝を抱えて、熱く燃えている顔を隠すように下を向く。
全身の血液が沸騰しているようであった。
「……っもう、荒様には栗を分けてあげません!」
行き場のない動揺は叫びとなってAの口から飛び出した。
「栗?」
「キョンシー三兄弟からお裾分けして貰ったものです! 私が一人で全部食べます!」
荒は軽く吹き出すように含み笑った。
自棄になって喚いているAが可愛くて可愛くて、膝に埋まっているAの頭にそっと手を伸ばして、さらさらと髪を梳いた。
「それが私への仕返しか? 愛しいな」
念願叶ってかなり機嫌が良いらしい。
躊躇うことなく零された荒の甘い言葉に、Aはとことんまいってしまった。
「知りません……荒様なんてもう知りませんから……」
恥ずかしくて、目頭までもが熱くなる。
Aはどうにかして気を紛らわす為に、別のことを考え始める。
「……あっ、栗……そのままではなく栗御飯にするという手もありますか……」
思わず漏れた小さな独り言が、荒にはちゃんと聞こえていた。
「お前が作るのか?」
「作ろうかな……とは思っています」
「そうか。楽しみにしているぞ」
指の甲でAの頬を撫で上げる荒は、本当に幸せそうに微笑んでいた。
貴方には絶対に振る舞わない、とAは意地悪く言い返したかったが、何故だか上手く言葉を紡ぐことが出来なかった。
----
主人公大分可愛げが出てきた!(笑)
ただ飄々感が薄れていっているのがちょっと寂しい……でもこれが本当の姿……( ¨̮ )
----
29人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イズモ(プロフ) - 茶々丸さん» わ〜ご愛読ありがとうございます!!…荒の声優さんに念を送ってもらいましょう!(平安京ラジオ) (2019年9月23日 18時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
茶々丸 - 一年経っても見させてもらってます!荒来てくれえぇぇ!大歓迎だぞぉぉお! (2019年9月23日 10時) (レス) id: 65a910c7b3 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 横ごりらさん» !!確かに!荒って何か…自分のこと好きじゃなさそうな気がするんですよね…伝記でもどっちかと言うと人間より自分を責めてる感があるように思えますし…どれも個人意見ですが(´-ω-`)こちらこそ、荒のこと語り合えて楽しかったです!ありがとうございました! (2018年9月11日 21時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 「愚か者め!」「愚かな・・」とかもよく言ってますが、「愚か」って、自分自身にも思っててよく使う言葉なのかな・・とも思いました>< いえ!とんでもないです!またイズモさんのお話を聞けてとっても嬉しいです!(^///^)お返事くださり有難うございました! (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 私も想像になってしまいますが、もしも叱ってくれているのだとしたら本当に優しいですよね・・・常に無表情で厳しい言動の裏では、本当は自分以外の存在をいつも気にかけてくれているのかなと思えます(;_;)いっそ本心から見下して関わらなければいいのに・・(;_;) (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:イズモ | 作成日時:2018年6月30日 20時