「女と酒と片割れと」(弍) ページ20
「紅葉から身を引く気は無いのですね? 酒呑童子」
「当たり前だろうが!!」
それを聞いた紅葉は、反吐が出ると言わんばかりに嫌悪の表情を見せた。
この反応を見ての通り、酒呑童子の恋愛成就は絶望的である。
だが諦めたくないという一途な気持ちには共感出来るなとAは思った。
悪鬼と言えども酒呑童子だって一人の女に恋する健気な男だ、ちゃんと助言してやるべきだろう。
「でしたら……晴明様のような男性を目指してみてはどうでしょう?」
目を大きく見開いた酒呑童子は直ぐさま反論した。
「はぁ!? 何でそうなるんだよ!?」
憎い恋敵を見習えと言われ気を悪くするのは無理もないことだ。
Aは酒呑童子を落ち着かせる為に、自身も落ち着いた声で言い聞かせる。
「紅葉好みの男性になれば好機が訪れるかもしれない、ということですよ」
諦めろ以外の助言で思いついたのが、このような苦しい助言だった。
「……気に食わねぇ理屈だが、筋は通っているっちゃあ通っているな」
屁理屈ではあるが納得出来る部分もあると思ったらしい酒呑童子は、舌打ちをしガシガシと頭を掻き毟りながらそう言った。
酒呑童子は常に血の気が多いが、決して頭は悪くない。
今の自分のままだと紅葉は振り向いてくれないという現実から、目を背けてはいないようだ。
「そうと決まれば奴を偵察しに……」
酒呑童子のその言葉に反応し、紅葉の眼光が一層鋭くなった。
「偵察ですって!? そう言ってどうせ晴明のとこで迷惑する気でしょう!? そうはさせないわ、晴明は私が守るんだから!!」
先回りするついでに晴明とお話ししようという魂胆丸見えな様子の紅葉は、綺麗な楓を散らして姿を消した。
取り残される二人。
抜け殻のようになった酒呑童子は、力の無い声でAに問う。
「A……俺はこの先どうすれば良い?」
「……取り敢えず追ってみては」
「追ったら追った先で俺様が傷つくだけだろうがぁー!」
今頃てんやわんやであろう庭院の様子が容易に想像出来る。
酒呑童子が全力で片思いの女の元へ向かってくれたら、今回の話はここで終わったのだが……。
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イズモ(プロフ) - 茶々丸さん» わ〜ご愛読ありがとうございます!!…荒の声優さんに念を送ってもらいましょう!(平安京ラジオ) (2019年9月23日 18時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
茶々丸 - 一年経っても見させてもらってます!荒来てくれえぇぇ!大歓迎だぞぉぉお! (2019年9月23日 10時) (レス) id: 65a910c7b3 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 横ごりらさん» !!確かに!荒って何か…自分のこと好きじゃなさそうな気がするんですよね…伝記でもどっちかと言うと人間より自分を責めてる感があるように思えますし…どれも個人意見ですが(´-ω-`)こちらこそ、荒のこと語り合えて楽しかったです!ありがとうございました! (2018年9月11日 21時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 「愚か者め!」「愚かな・・」とかもよく言ってますが、「愚か」って、自分自身にも思っててよく使う言葉なのかな・・とも思いました>< いえ!とんでもないです!またイズモさんのお話を聞けてとっても嬉しいです!(^///^)お返事くださり有難うございました! (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 私も想像になってしまいますが、もしも叱ってくれているのだとしたら本当に優しいですよね・・・常に無表情で厳しい言動の裏では、本当は自分以外の存在をいつも気にかけてくれているのかなと思えます(;_;)いっそ本心から見下して関わらなければいいのに・・(;_;) (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2018年6月30日 20時