検索窓
今日:4 hit、昨日:13 hit、合計:45,136 hit

「ヤンチャな般若」(肆) ページ12

恋文の件もあり距離が急接近した二人は、今も文通を続けているらしい。


時折河童が追加の紙をAに貰いにやって来るのだ。


ご近所同士でしかもほぼ毎日一緒に遊んでいる仲であるのに、お互い非常に筆忠実であるようだ。


いつまでも純粋な関係を築けている河童と鯉の精。


Aはそんな二人の仲を微笑ましく思うと同時に、少し羨ましくも思った。



「ねえ、A聞いてる!?」


「あっ……はい、何でしょうか?」


般若の声が聞こえないくらい、河童と鯉の精を見守るのに没頭してたらしい。


「もー! さっきから質問してるのに!」


「……えっと、何でしたっけ?」


河童と鯉の精が飛沫を上げて潜水していったのが、Aの視界の端に映った。


池の底で仲良く遊泳を始めたのかもしれない、それきり水面から顔を出さなかった。


「だから、あの男とはどこまでやったのかって聞いてるの!」


「え……?」


般若が言う「あの男」とは、荒のことで間違いないだろう。


質問の内容にどこか際どさを感じ、Aは戸惑った。


「口吸いの一つや二つはもうしたの?」


「……いえ……まだです……」


荒がAの頬になら、というのは敢えて内緒にする。


賢明な判断だ。


「へぇ、それは良いこと聞いちゃった」


般若は舌舐めずりをしながら、腹を空かせた獣のような瞳で、Aを見つめた。


「じゃあ僕が、アイツより先にしちゃおうかな」


首に腕を回そうと、般若はAに向かって手を伸ばした。



「いい加減になさい般若!」



「痛っ!」



般若はその手を引っ込めた。


Aが般若の額に向かって、親指に引っ掛けるように折り曲げた中指の指先を、強く弾いたのだ。


般若はヒリヒリと小さく痛む額を両手で抑えて、涙目になりながらAの方を見た。


Aは申し訳なさ混じりの怒った顔で、般若を睨んでいる。


「何でも我儘聞いてあげると思ったら大間違いですからね」


「…………」


うう、と般若の声が掠れる。


また泣かせてしまったと思い、Aは焦燥に駆られる。



だが般若は唇をぐっと引き結んだ後に、大きな溜息をついただけであった。

「ヤンチャな般若」(伍)→←「ヤンチャな般若」(参)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (49 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
29人がお気に入り
設定タグ:陰陽師 , 陰陽師(ゲーム) ,   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

イズモ(プロフ) - 茶々丸さん» わ〜ご愛読ありがとうございます!!…荒の声優さんに念を送ってもらいましょう!(平安京ラジオ) (2019年9月23日 18時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
茶々丸 - 一年経っても見させてもらってます!荒来てくれえぇぇ!大歓迎だぞぉぉお! (2019年9月23日 10時) (レス) id: 65a910c7b3 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 横ごりらさん» !!確かに!荒って何か…自分のこと好きじゃなさそうな気がするんですよね…伝記でもどっちかと言うと人間より自分を責めてる感があるように思えますし…どれも個人意見ですが(´-ω-`)こちらこそ、荒のこと語り合えて楽しかったです!ありがとうございました! (2018年9月11日 21時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 「愚か者め!」「愚かな・・」とかもよく言ってますが、「愚か」って、自分自身にも思っててよく使う言葉なのかな・・とも思いました>< いえ!とんでもないです!またイズモさんのお話を聞けてとっても嬉しいです!(^///^)お返事くださり有難うございました! (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 私も想像になってしまいますが、もしも叱ってくれているのだとしたら本当に優しいですよね・・・常に無表情で厳しい言動の裏では、本当は自分以外の存在をいつも気にかけてくれているのかなと思えます(;_;)いっそ本心から見下して関わらなければいいのに・・(;_;) (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:イズモ | 作成日時:2018年6月30日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。