「女と酒と片割れと」(玖) ページ27
「立てるか?」
「は、はい」
確認を得てから、荒はそっとAの両足を床につけさせる。
そしてAがよろめかないよう、手を掴んで支えた。
Aの小さな手を握るその力は、逃げられないと思い知らされる程強い。
本当に、一緒に入浴するつもりなのか。
Aは恐怖にも似た羞恥に耐えられず小刻みに震えた。
もう頭は酔いやら照れやらで使い物にならないし、上手く手を振り解く体力も残っていない。
振り解けたところで、どうにもならないだろうが。
……腹を括るしか道はないのだろう。
Aは緊張の波を少しでも和らげようと、目を瞑って唇を噛み締めた。
「……馬鹿だな」
「えっ……?」
一驚した表情で、Aは俯く頭を上げた。
Aの真っ赤な顔につられたかのように、荒も頬を赤らめている。
「本気にしていたのか」
そう言って、Aの手を放り出すように離してから、荒は去って行った。
過ぎ去った嵐に一安心、とはいかなかった。
Aは困惑しながら立ち尽くしていた。
結局、一人湯であったのは言うまでもないこと。
Aを気遣ったのか、それとも言い出した自身の方が恥ずかしくなったのか。
本当の心情は荒のみが知っている。
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大江山組の出番を三話で終わらせるのは勿体無いと思って作ったお話。
……にしても何だこのオチは(収拾つかなくなった)
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イズモ(プロフ) - 茶々丸さん» わ〜ご愛読ありがとうございます!!…荒の声優さんに念を送ってもらいましょう!(平安京ラジオ) (2019年9月23日 18時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
茶々丸 - 一年経っても見させてもらってます!荒来てくれえぇぇ!大歓迎だぞぉぉお! (2019年9月23日 10時) (レス) id: 65a910c7b3 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 横ごりらさん» !!確かに!荒って何か…自分のこと好きじゃなさそうな気がするんですよね…伝記でもどっちかと言うと人間より自分を責めてる感があるように思えますし…どれも個人意見ですが(´-ω-`)こちらこそ、荒のこと語り合えて楽しかったです!ありがとうございました! (2018年9月11日 21時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 「愚か者め!」「愚かな・・」とかもよく言ってますが、「愚か」って、自分自身にも思っててよく使う言葉なのかな・・とも思いました>< いえ!とんでもないです!またイズモさんのお話を聞けてとっても嬉しいです!(^///^)お返事くださり有難うございました! (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
横ごりら(プロフ) - イズモさん» 私も想像になってしまいますが、もしも叱ってくれているのだとしたら本当に優しいですよね・・・常に無表情で厳しい言動の裏では、本当は自分以外の存在をいつも気にかけてくれているのかなと思えます(;_;)いっそ本心から見下して関わらなければいいのに・・(;_;) (2018年9月11日 9時) (レス) id: 72764b205c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2018年6月30日 20時