「希う」(弍) ページ48
悪くない沈黙が少し続いた後、言葉を紡ぎ始めたのは荒だった。
「私は陰陽師としてのお前に一度救われたにも関わらず、陰陽師としてのお前を否定してしまった」
荒は自分なりに考えていたことを、Aに明かそうとしていた。
しっかり聞く為に、Aは姿勢を正す。
荒はお喋りな紙人形から聞かされるまで、Aが自分の立場に負担を感じていることなんて、夢にも思ってなかった。
様々な依頼を安請け合いしている普段の姿を見る限り、仕事に対する苦痛など全く感じられなかったのだから。
その事実を知った瞬間、突如として荒は、Aと会話がしたいと思った。
帰ってくるまで待てなかったので、紙人形に村の正確な位置を聞き出した。
村に着いてからは、Aの持つ霊力を辿って行った。
そして到着先にて、墓石の側でうずくまるAの姿を見た。
足音を忍ばせずに距離を詰めたのに、Aは微動だにしなかった。
荒は自分とAの間に、一線が引かれているように感じた。
それがどうしようもなく嫌だと思った。
荒が来たことに気がついたAは少し怒っていたが、荒はAの過去を知る為に引き下がらず踏み込むことにした。
Aは荒の過去を知ったのだから、荒にはAの過去を知る権利がある。
これで公平になるだろう、そう自らに言い聞かせたのだ。
Aに拒否され歩く羽目になったが、自分が一旦気持ちを腹に収めるしかないと荒は思った。
途中で無理矢理連れ帰ってしまおうかとも考えたが、先程腕を振り解かれた光景が思い出され、思い留まられた。
無言の徒歩の中で、荒は色々と思考した。
今ここで賀茂忠行について聞こうか。
いや、繊細な話はもっと落ち着ける場所での方が良いだろう。
都まで我慢するしかない。
何か別の話をしようか。
いや、場を盛り上げられるような話題なんて持ち合わせていないし、そもそも楽しく会話出来る雰囲気ではない。
散々悩んでも良い案は思い浮かばない。
これだけこちらが気遣ってやっているというのに。
言葉を発するどころかこちらを振り向こうともしないAに、段々と八つ当たりとも言える怒りが込み上げてきた。
同時に、こんなことで苛々としてしまう己の不甲斐なさがあまりにも情けなく思えた。
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イズモ(プロフ) - 蒼羅さん» コメントありがとうございます！更新頑張ります(о´∀`о)荒様はかっこいい！！笑 (2018年6月20日 8時) (
レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羅 - 荒様格好いい!!この小説読んで荒様のイメージが変わった(´V`)♪続き楽しみにしてます!!更新頑張って下さい!! (2018年6月19日 22時) (レス) id: 6ae6ae8c8c (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 美八さん» ありがとうございます！！もう少しだけお待ちください！ (2018年6月14日 12時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
美八 - 私は、この続きが気になっているのでお待ちしております！ (2018年6月14日 7時) (レス) id: 008655f029 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イズモ | 作成日時：2018年5月13日 21時
