検索窓
今日:8 hit、昨日:17 hit、合計:49,257 hit

「冥界にて会談」(柒) ページ5

「……もしや、そやつの名は」


「閻魔様!」


何やら慌てた様子の判官が、二人の間に立ち入る。


肝心なところで会話を遮られ、閻魔は不機嫌そうな横目で判官を見た。


「何事だ判官。まだ話は終わっていない」


「いえ、その……」


常日頃から安定して冷静沈着な判官の妙な慌てっぷりに、閻魔は違和感を覚える。


判官は自身の焦りの感情を落ち着かせようと胸元を押さえながら、申し上げづらそうに口を開いた。



「スサビ様が、お越しになりました」



「……! なんと……!」



閻魔の表情が初めて歪む。


「邪魔をするぞ。閻魔」


間を空けずに荒が姿を現す。


緊張が走る現場の空気に刺されて、思わずAも息を呑んだ。


「都の陰陽師連中が、Aが消えたと騒いで煩わしい」


一層きつく当たる目に、この場にいる全員の背筋が凍りつく。


先程まで余裕のある表情を崩さなかった閻魔が、頬に冷や汗を滲ませていた。



「返して貰えないか」



否とは言わせない、荒の鋭い両眼がそう物語っていた。


もしかするとだが、荒は閻魔がAを攫ったと思い込んでいるのかもしれない。


実際それは誤解であるのだが、そう勘違いされても可笑しくはない雰囲気であった。


口を挟む間も弁解する隙も与えられず、重い沈黙だけが流れる。


「……は……」


とうとう閻魔は頭を垂れた。


同意を得たと判断し、これ以上の長居は無用だと荒はAに向き直る。


「行くぞ」


「は、はい」


「……早くしろ」


肝を冷やしている閻魔と判官のことを気にしつつ、Aは小走りで、少々焦れったそうにしている荒の元へ急ぐ。


そして二人は冥界から立ち去った。


軽く騒動となっているであろう宮廷へと帰って行ったのだった。




「……わらわは思い出したぞ。A」



閻魔の目は、悲哀に揺れていた。



「お前の師匠……無残な死を遂げた、可哀想な男……」



都の為に生き、都の為に死んだ者。

「冥界にて会談」(捌)→←「冥界にて会談」(陸)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (48 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
20人がお気に入り
設定タグ:陰陽師 , 陰陽師(ゲーム) ,   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

イズモ(プロフ) - 蒼羅さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります(о´∀`о)荒様はかっこいい!!笑 (2018年6月20日 8時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羅 - 荒様格好いい!!この小説読んで荒様のイメージが変わった(´V`)♪続き楽しみにしてます!!更新頑張って下さい!! (2018年6月19日 22時) (レス) id: 6ae6ae8c8c (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 美八さん» ありがとうございます!!もう少しだけお待ちください! (2018年6月14日 12時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
美八 - 私は、この続きが気になっているのでお待ちしております! (2018年6月14日 7時) (レス) id: 008655f029 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:イズモ | 作成日時:2018年5月13日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。