「伝記解放」(伍) ページ40
泣きながら心中を打ち明ける私の話を、忠行様と陰陽師様は真剣に聞き入ってくれた。
全てを話し終えた後に、忠行様の話が始まった。
先ずは黒い影の正体。
あれは死後様々な理由で行き場を失い、地上を彷徨う人間の魂だという。
成仏出来ない時間が長くなればなる程凶悪化し、霊感の有無は関係なしに人を襲うようになるらしい。
あれらのような者達は、自分達の存在を認識し自分達の話を聞いてくれそうな優しい人間に寄り付くそうだ。
計らずも私は、影達の格好の標的になってしまっていたという訳であるそう。
続いて見鬼の才について。
普通の人間には視えないものを視ることが出来る能力のことだ。
忠行様が言うには、人が見鬼の才に目覚める条件は二種類。
一つ目は修行や鍛錬の末に得るか。
二つ目は生まれつきに備わっているか。
陰陽師様は一つ目の条件で、私と忠行様は二つ目の条件で目覚めた。
勿論一般的には一つ目の理由で目覚める者が圧倒的に多い。
忠行様のように由緒正しい陰陽師の家系に生まれた人間ならともかく、私のような田舎村の一庶民が先天的に目覚めているのは、極めて異例であるとのこと。
物事には何にでも理由がつくものだが、私の場合は天与の才能としか捉えようがないと忠行様は言う。
神が恵んだ奇跡の力か、それとも何らかの因果により神が与えた試練か。
適当な仮説なら幾らでも立てられる。
とにかくそういう星の下に生まれてしまった以上、この運命からは逃れられないだろう。
忠行様の話はとても難しく、全てを理解することは出来なかった。
ただはっきりとしたのは、私は一生あれ等と付き合っていかなければならない、ということ。
真っ黒で底の見えない闇を形取ったようなあの恐ろしい者達は、もう視たくないのに。
あの裂けた口から発せられるガサガサと枯れた悍ましい声は、もう聴きたくないのに。
それが叶わないのなら、私はこの先どうやって生きていけば良いのか。
死ぬまでずっと怯えて生活しなければならないのか。
悲しい気持ちに逆戻りした私は、再び泣き出してしまった。
忠行様は少し考えてから、私にこう告げた。
「私の元で陰陽道を学ぶ気はないか？」
きょとんとする私と愕然とする陰陽師様に構わず、忠行様は続けた。
「お前には、陰陽師の素質がある」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イズモ(プロフ) - 蒼羅さん» コメントありがとうございます！更新頑張ります(о´∀`о)荒様はかっこいい！！笑 (2018年6月20日 8時) (
レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羅 - 荒様格好いい!!この小説読んで荒様のイメージが変わった(´V`)♪続き楽しみにしてます!!更新頑張って下さい!! (2018年6月19日 22時) (レス) id: 6ae6ae8c8c (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 美八さん» ありがとうございます！！もう少しだけお待ちください！ (2018年6月14日 12時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
美八 - 私は、この続きが気になっているのでお待ちしております！ (2018年6月14日 7時) (レス) id: 008655f029 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：イズモ | 作成日時：2018年5月13日 21時
