「めぐしき女陰陽師」(拾) ページ31
Aの体から力が抜けたのを見計らい、腕の力を緩めてやる。
Aは驚いていたが、荒はそれ以上に、自分自身の発言に驚いていた。
無意識というのはなんとも恐ろしい。
だがおかげでAはすっかりおとなしくなった。
おとなしくはなったが、言葉にならない涙声がまた漏れ出し始めている。
荒は、掴んだことで乱れてしまったAの後ろ髪を整えてやるついでに、俯く頭を撫でた。
されるがままのAは、押し殺し切れない声を小さく漏らしながら泣いている。
……可哀想に。
Aに一番掛けてはいけない同情の言葉が、口をついて出てしまいそうになるのを荒は堪えた。
甘えたい盛りの年頃に親元を離れ、厳しい修行を積み重ねた日々。
その中で唯一頼れる存在を失ってしまってからは、誰にも頼ることが出来ず、本当は誰よりも孤独に生きていたのだろう。
今まで辛かっただろうな。
だが分かりやすい同情の言葉は、Aの傷を抉る刃に成りかねない。
彼女が築き上げてきた物を既に壊してしまったので、今更な気遣いかもしれないが、敢えて言わないでおこうと荒は思った。
それは荒なりの思い遣りであった。
改めて荒はAを優しく包み込む。
だらりと力無くぶら下がった腕を背中に回してきてはくれないだろうかと、密かに思いながら。
Aが疲れ切って意識を手放すまで、二人はずっとその状態であった。
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タイトル解説!
めぐしき=愛(めぐ)し=切ないほど可愛い・愛おしい=可哀想・労しい
です。
平仮名にしたのは「愛(いと)し」ではなく「愛(めぐ)し」と読んで欲しかったからですm(._.)m
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イズモ(プロフ) - 蒼羅さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります(о´∀`о)荒様はかっこいい!!笑 (2018年6月20日 8時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羅 - 荒様格好いい!!この小説読んで荒様のイメージが変わった(´V`)♪続き楽しみにしてます!!更新頑張って下さい!! (2018年6月19日 22時) (レス) id: 6ae6ae8c8c (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 美八さん» ありがとうございます!!もう少しだけお待ちください! (2018年6月14日 12時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
美八 - 私は、この続きが気になっているのでお待ちしております! (2018年6月14日 7時) (レス) id: 008655f029 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2018年5月13日 21時