「めぐしき女陰陽師」(参) ページ24
夜が深まってきたが、都の中はそれなりには明るい。
行灯で周囲を照らす必要がなくなり、役目を終えた紙人形は煙になって消える。
「……」
一旦足を止めて、ちらりとAは、一切口出しせず本当に二時間以上も徒歩に付き合ってくれた荒を見た。
荒は物凄く機嫌の悪そうな形相で、Aが歩き出すのを待っている。
時間と体力を無駄に消費し大分ご立腹のようだが、そんなに怒るくらいなら何故Aを放って置いてくれなかったのか。
つられてAも苛々した。
相手は高天原の神明様だとかそういうのは関係なく、たちの悪いお方だと思ってしまった。
お互いつまらない意地を張っているのだろう。
だがこんな町中で睨み合いを続けるのは、それこそ時間の無駄である。
早く帰って早く寝よう、Aは心の底からそう思った。
宮廷まで後少し。
夜の町を進み、裏口から宮に入り、中庭を通り抜け、Aの自室がある離れの方へ。
ようやく帰還。
『あ、A様。おかえりなさい。お布団敷いてありますよ』
出迎えた留守番紙人形にAは「ご苦労様でした」とだけ声を掛けてから、消した。
「……」
まさかここまで荒が付いて来るとは、Aは夢にも思っていなかった。
どう考えても、宮に入った時点で解散が自然な流れなのに。
そもそも部屋まで来る必要があるのだろうか。
ありがた迷惑を通り越して不気味に思えた。
何のつもりなのか全く読めない。
読めないけれど、今のAに考える気力などなかった。
「お見送り頂き感謝致します。それでは、おやすみなさい」
義務的に礼を述べ頭を下げてから、障子に手を掛けようとした。
「賀茂忠行とは何者だ」
その手が止まる。
Aはゆっくりと荒の方へ振り返る。
Aの表情に動揺の色が混ざり始めた。
一方荒は至って毅然と構えている。
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イズモ(プロフ) - 蒼羅さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります(о´∀`о)荒様はかっこいい!!笑 (2018年6月20日 8時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羅 - 荒様格好いい!!この小説読んで荒様のイメージが変わった(´V`)♪続き楽しみにしてます!!更新頑張って下さい!! (2018年6月19日 22時) (レス) id: 6ae6ae8c8c (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 美八さん» ありがとうございます!!もう少しだけお待ちください! (2018年6月14日 12時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
美八 - 私は、この続きが気になっているのでお待ちしております! (2018年6月14日 7時) (レス) id: 008655f029 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2018年5月13日 21時